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2013/12/14台湾旅行記(4)-大雨の九份へ

昨夜元気よく飲みすぎたせいなのか、夜中2時過ぎに目が覚めてしまい5時近くまで眠れなかった。電気をつけて妻を起こすわけにもいかず、iPhoneの中にダウンロードしておいたPodcastの未再生番組をひたすら消化。考えたらこのPodcast漬けの生活をはじめて何年になるだろう。たぶんiPodカラーを買った2005年くらいから。副作用として書籍の購入量が10倍くらいになったことと、海外旅行に行っても日本語に飢えることがなくなってしまったことか。再び起きたのはもう8時近かった。妻はまだ寝ている。
チェックアウト前の部屋

今日でこの部屋を出る予定なので、10時のチェックアウトまでに広げっぱなしの荷物類をパッキングする。ベランダに洗濯機があるので衣類は最小限なのが有り難い。日本にくらべて寒くないことも荷物の少なさに貢献したし。それでも二人で中型のトランク1個くらいにはなるのはなぜなんだろう、なんて考えながらチェックアウト。決済済みなので特に追加などもなくあっさりとビルを出る。台北に来るときはお薦めです、ベントリーパークスイーツ

まだまだ降っている雨の中、道路を渡り手を挙げてタクシーを捕まる。この旅で初のタクシー利用だ。台北駅まで、と告げると、大きな荷物は助手席に置け、と指示された。たぶん雨だからリヤトランク開けるのが面倒なのだろうけど、日本のタクシーだとキャリーバッグを助手席に突っ込んだら逆にイヤな顔されるだろうなーなんて考えてたら台北駅だ。運賃はメーター制で100元。

今日はこれから台北近郊の観光地、九份(きゅうふん、ジォウフェン)に行く予定。十分日帰りできる距離なのだが、妻がネットで見つけた民宿がとても良さそうだというので1泊してくることに。予約といっても日本語と英語でメール送ったら中国語で返事が来ただけなので本当に取れてるか不安もあるのだけど、まあその時はプランBってことで。

地下街で肉ラーメン
さて台北駅で何か食べておこうかとたくさんある地下街のひとつに潜る。しかしもう10時半にもなるというのにどこも開店準備中か全くの閉店だ。ようやく見つけた小綺麗な麺屋、いまにも開きそうな雰囲気で準備中なのでじろじろとメニューを眺めてたら、もう入れますよ、的な中国語で店内に導かれたのでいそいそとテーブルに着く。メニューを決めて先払い。麺を2品。僕らが先鞭をつけたせいかどうかわからないけど、若者たちがぞろぞろと店内に吸収されはじめる。出てきたラーメンはこれがまたけっこうなボリュームだった。今風オシャレな店の造りとは裏腹にとても美味なラーメンでございました。ついでにネットに繋いで九份までの列車を調べる。
台北駅の窓口に並ぶ

駅のチケット売り場に妻が並ぶが長蛇の列だった。このままだと最初考えた列車には間に合いそうになくその1時間後の列車に変更。その間にも便があるのだけど、追加料金が必要な特急なのだ。僕らは鈍行なのだ。たかだか41kmだし。僕はその間巨大なクリスマスツリーやこどもたちの募金活動を眺めたりカメラ片手に正しい観光客になる。長い時間並んでようやく手にしたチケットだがよく考えたら自販機で買えばよかったのだった、あはは。まあこれも旅だ。

台北駅から瑞芳駅へ
出発まであと1時間ほどあるのでどこかでお茶しようかなと、目に入った中山地下街という看板につられてしばらく歩くが全くもって遠方に位置する地下街だったことが途中で判明。このまま進むとお茶飲むどころか出発に間に合わなくなるぞと引き返し、プラットフォーム(台湾では月台、と書くみたい)の椅子に座って文庫本読んだりして時間をつぶす。下川裕治さんの本、面白い。やはりルポ本は現地で読むに限るのだ。

列車は若者たちで満員
列車の停車位置が変更になったのだ、と駅員が案内するのでその辺の人間に合わせてぞろぞろ歩いてたら列車がきた。何と満員列車だ。座れるとかの問題ではなく通勤電車状態だ。しかもこれが若者ばかりだ。途中で降りるかなと思いきや,結局のところほぼ全員が僕らが降りる予定の瑞芳駅まで楽しげにぎゅうぎゅうだったのであった。どうやら九份は台北の若者たちにとって日帰りデートコースってことみたいだ。

雨の瑞芳駅に着いた
瑞芳駅に着く。雨だ。全力で雨だ。バスもタクシーも駅前に並んでいるが僕らはタクシーを使うことに。一度タクシーに乗ると癖になるってわけでもないんだけど。案内人のオヤジがいて、「キュウブン?」と聞かれそうだと答えたら5ドアのプリウスタクシーに乗せられる。値段は180元と決まっているようだ。台湾は値段に関しても善良な気がする。他の国みたいに生き馬の目を抜く感はない。予約していた民宿の住所を紙に書いて見せると分かったという言葉とともに出発。箱根のようなくねくねカーブを雨のなか某豆腐店のごとくかっ飛んでいたが、突如カーブの途中にクルマを止めると到着だ、ここが君らの目的地だ、とのこと。

雨にも負けずバスが行き交う
確かに八番坑という名前は民宿と同じである。が、どう見てもこれはお土産屋さんだぞ。店内に入りレジのおばちゃんに苦労していろいろ聞くとああ、民宿はここではない、裏手だ、みたいな感じの返事が返ってきた。「ニホンジン?」と聞かれたのでそうだ、と答えたらあっさり日本語が通じた。そうだここは観光地だったのだ。


露店で傘を買う
土産物屋を出て裏手の民宿まで歩こうとするが雨風がたいへんなことになってきた。露店に色とりどりの傘が並べてあったので、そこのおばちゃんから傘を買う。

ようやく辿り着いた民宿だが、やっぱり予約は通っていなかった。今度は日本語も英語も通じないおばちゃんが一所懸命応対してくれるのだが、僕らもどうしたもんか決めかねている。この雨のなかあと数時間で台北に戻るのもなんだかって感じだし、土曜日の宿が台北で取れるかもちょっと不安だし。おばちゃんは彼女のスマホでどこかに電話をしてくれて、今度は早口の英語を話す女性が説明してくれたのだけど、「やはり予約は成立してない、しかも満室で泊まる部屋はないですよ」という現実を確認できた。「ならばこの町の観光案内所とか予約センターみたいなところはない?」と聞いてみたのだが「そんなのはないわねえ、ホテルに一軒一軒聞くしかないですよ」とのご返事。「じゃ貴女の友だちで空いてる部屋を持つ人はいないかしら?」と尋ねてみたら、「うーん、後でまた電話するからちょっと待ってて」という流れに。
予約したつもりの民宿で交渉中

しばらくして連絡があり、「近くの宿を確保したよ、ただし4人部屋しかなくてそれを2人で借りても値段は同じ2800元にしかできないけど、それでも良い?」とのこと。場所はここから歩いてすぐらしい。値段としては当初の民宿と変わらないのでありがとうとOKした。電話を貸してくれたおばちゃんが笑顔で良かったね、さあ行きましょう、と颯爽と雨の中へ歩き出し、その民宿まで案内してくれた。

階段を下がったところにあるわりと立派なビル。悠然居という宿では人の良さそうなおばちゃんが迎えてくれた。中国語以外は全くダメみたいだが、日本語の単語をなんとか思い出しては困った笑顔で懸命に説明してくれる。台湾のおばちゃんたち、最高じゃないですか。なんてピュアで愛らしいんだろう(もしかしたら同世代かもしれん)。
こちらの宿に泊まれました

広い部屋には大きなベッドが三つ、一つは二段がさねだ。民宿というより合宿所的な雰囲気。でも新しい。大型テレビやシャワー室も完備だ。雨の中移動するとやっぱり疲れるみたいで、部屋でしばらく休んだけど、もうだんだん暗くなってくるので出かけることにした。外に出ると相変わらず雨は降り続いている。ていうか横殴りの大雨、もはや嵐の様相である。

さっきタクシーを降りたあたりに展望所みたいのがあって、晴れてたらさぞや良い景色の名所っぽい。日本でいうと九份は別府や熱海みたいな観光地みたいだ。こんな天気にもめげず若者たちや小さな子供を連れた家族たちがスマホでお互いを記念撮影してる。
九份の雨景色
ちょっとだけ小降りになったのでまた歩き出す。お土産屋さんがひしめく小道へ。マカオにもこういう道があったっけ。とにかく人だらけ。完全なアーケードでもないので場所によっては傘を差さないとずぶ濡れになったりする道を右側通行でゆっくり進む。それでも不思議と殺伐としてないのはみんな観光地に来て嬉しいからなのだと思う。日本語も今までになくたくさん飛び交っている。

雨は凌げないアーケード
噂の臭豆腐に挑戦することにした。35元。実際に食べてみるとそんな悶絶するほど臭いわけでもない。もうひとつ食べるか、と聞かれたら目が泳ぐと思うけど。様々なお土産屋がぎっしり所狭しと並んでて、売り子さんも元気に声を出している。でも他のアジア各国のようにしつこいことは全くない。あっさりしてるというか、必死感はないのだ。きっと生活に困らない程度の所得水準が達成されているからだろう。それにツールとしての資本主義をきちんと使いこなしてるって感じもした。妻は試飲した中国茶を買った。日本よりかなり安いそうだ。
臭豆腐に挑戦した

長いこと小道を歩き、高台の小学校の手前にある善哉屋さんへ入る。入った時にはそうでもなかったけど、あっという間に長い列ができてた。雑誌とかで紹介される有名店らしい。僕も少しもらって食べたけど、色の着いてないあっさりしたぜんざいだった。




妖しさを醸し出す手書き立て看
来た道を戻る。ネコがいた。さっき見かけた黄金博物館ってのに行こうか。横丁に怪しいく光る看板を見つけて坂を降りていくと、まるで昔の左翼系大学に並んでたような手書き立て看板が盛んに秘宝感を煽っている。手づくりの博物館らしい。歩いて行くと門に立つ親父が「フタツ100エン」というので二人分で200元を渡すと半分戻してきた。二人で100元ってことらしい。


すべてテンネンイシである
中に案内されるとほぼ一部屋の館内にはガラスケースの中に鉱石が並べられ、足元には泥水の入れられた洗面器が並べられて、子供たちが砂金を取り出す実習にいそしんでいた。ノートを持った女子中学生が聞き取り調査しているのはさっきのオヤジの奥さんらしい。そのオヤジは僕らに絶妙な距離を保ちながらも怪しげな日本語で展示物の解説をしてくれるのである。なんて親切なんだろう。でも最後はたいてい「テンネンイシ」と言うのがなんだか可笑しい。この展示は全部本物であると言いたいのだろう。豚肉石とか、暗幕箱に入れられた夜光石とか、強力な磁石で二つ合わせるとビーンと音のなる石、とかキラキラ光る砂金がものすごくたくさん含まれた異様に重たい石とか。それらを説明してくれながら必ず最後は「テンネンイシ、たった2500エン」となる。なるほどこれらのお土産を売るのもこの夫婦の生活費になるのだろうなと納得する。でも嫌な感じはしない。オヤジがちょっと照れながら言うからかな。しつこくもないし。

博物館長である

妻は砂金取りに挑戦してたが、僕はトイレを借りて、じゃあそろそろ帰るよ、と出口に向う。するとオヤジは満面の笑みで、ああまた来てくれよ、鉱石っていいもんだろう?みたいな笑顔で送り出してくれて、最後はピースサインで撮影にも応じてくれた。あの石が全部本物だと思わないけど、これって素晴らしい商売なんじゃないかって思ったよ。




期せずして出逢った夜景
あたりはすっかり暗くなっていた。人混みを避けてまた違う横丁に入ってみる。今度は丘を上がっていく方向だ。狭くて不思議な小径を傘さして歩いていると、次第に生活感が増してくる。いつの間にか夜景を見下ろせる場所に出ていたようだ。さっきまでの喧騒が嘘みたいに静かな道路に突っ立って夜景をただ呆然と眺める。山あいから海に至る斜面に灯りが連なっていてそこに霧が漂ってる景色はこの世ではないどこかのものみたいだ。ふと振り向くとそのそこには石垣島で見たような大きな墓が並んでいるのだった。それは山頂に向かって延々と連なっていた。妻は少し恐いと言ったけど、僕にはなにかとても神聖な感じで、ああこれが本当の南の島の景色なのかもなあなんて。
山頂まで墓地だった



来た道を降りていくと、台北まで戻る大型バスとそれに並ぶ長蛇の列が見えてきた。日帰り組はそろそろ帰らないと行けない時間なのだろう。せっかく宿を確保した僕らはまた土産物街に戻り、今度は千と千尋の神隠しのモデルになったと一部でいわれてるお茶屋阿妹茶館を目指す。マップを頼りに横丁を折れると観光ガイドの写真でよく紹介される赤提灯が並ぶ景色が目に入った。これはこれで良い景色だ。それにしてもものすごくたくさんの日本語が飛び交っていて、団体を率いる現地案内人が大声で集合時間などを説明している。
有名店は予約で満席

その茶酒館の入口まで歩くと店員に、二人、お茶?と聞かれたので「食事は?」と尋ねたのだがもう予約でいっぱいらしい。ということでお茶することに。一番安いお茶セットが一人300元。安くはないなあ、なんて思ったけどとりあえず座りたかったし、入口近くの席に案内されて座るとしばらくしてヤカンをぶら下げたお姉さんがやってきて、中国茶の入れ方を実演してくれるのだった。いくつかのお茶菓子も並べられた。妻は数年前に中国茶に凝ってたことがあり、そういえばうちにも中国茶セット一式あるので、はいはい、と頷きながら聞いている。
中国茶を満喫


システマチックな儀式の末に入れられた中国茶は雨で冷え切った身体にじわっと染み込んだ。お茶菓子もとても美味しかった。二杯目からは妻が入れてくれた。なんてことのない色と味のついた熱湯とお菓子なのに、疲れた身体にはたくさんのご馳走に匹敵する安心と快楽をもたらすのが少し不思議な感じだった。イギリス人がお茶文化に心を奪われたのはきっとロンドンに雨が多かったせいではなかろうか、なんてことを考えていたらなぜかお持ち帰り用のお茶葉まで間違ってぽりぽり食べてしまった。

たくさんの客を相手に走り回って働いている店員の多くは中年女性だ。それに混じって十代と思しきバイトの男たちもいる。客と無駄話に余念のないおやっさんもいる。男たちは顔が似ていたからもしかしたら家族なのかもしれない。スタバ的なサービスに慣れた僕らにはちょっと新鮮だったし、こういうのも悪くないな、と思えた。宿に戻ってネットみてたらこの店に宮崎駿がやってきて千と千尋のアイデアを練ったってのはどうもネタくさいって書いてあったりしたのだけど、まあそれはそれとして観光地は貪欲に消化していくのです。

落ち着いた料理店
外に出ると相変わらず喧騒だ。そろそろお腹空いたよね、何か食べようと検索してたら見つけた誰かのブログ記事を頼りにすぐ隣の洞窟に入ってみる。これってきっと昔ここで盛んだった金鉱をイメージしてるのだろう、落書きだらけの洞窟を抜けるとひっそりと中華料理店「芋子番薯」が建っていた。予約なしでもオッケーてことでテーブル席に腰掛けてとりあえずビール。中国語しか通じないおばちゃんにiPhoneの翻訳アプリを使ってお勧めを、とお願いしたら海老炒飯みたいのが出てきた。もう一品は三杯豆腐をチョイス、これは酢豚の肉が揚げ出し豆腐になったような料理、いずれも美味しかった。ビールを三本飲み、会計。そりゃ台北の屋台よりかは高いけど日本に比べればぜんぜんリーズナブルなお値段だった。きっと晴れてたら最高の景色なんだろうなあ。店内には骨董品がたくさん並んでいた。


まだまだ雨は降っている。セブンイレブンで買い出しして宿に戻る。僕はすっかり身体が冷えてしまってまた少し疲れが出たようだ。考えてみれば台湾に出発する直前は寝込む寸前だったんだった。写真整理しながら寝てしまったようだ。やばい、と起きてゆっくりシャワーを浴び、暖房をつけて大きなベッドに包まっていたらいつの間にか熟睡。妻は相変わらず元気に一人でネットしたり飲んだり食べたりしてたみたい。大雨の九份だったけど僕らは十分に楽しめたと思う。

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