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僕は冷や汗をかきながら20年前に連れて帰ってきたアメリカ野郎の調教に熱中した

バンド再結成が口約束なされた証拠写真
2014年のお盆休み、自宅に遊びに来ていた甥姪を八代の実家にまで送っていくことになった。せっかくだからと久々に街に繰り出し、あちこちの店を回っているうち辿り着いたのがカリスマアフロヘアボーカリストT氏の経営するミュージックレストランバーであった。すっかり酔いの回っていた僕は勢いで20年ぶりに一緒に演奏するって約束をしていたらしいのだが実はよく憶えていない。その時にiPhoneで撮った写真があるから事実なのだろう。


この曲をやるからな、とCDが届いた
ところが9月に入って間もなくカリスマT氏は僕の携帯を鳴らし、近々CDが届くはずなので練習しておくように、10月には練習を始めるからそのつもりで、と告げるのだった。よもや本気出してるとは思わなかったので狼狽えたが、まあ20年前にはできてたわけで、今回も楽勝だわあははなどと軽く考えているところに届いたCDには何やら見知らぬ曲まで含め10曲も詰まっているのであった。最初の練習は10月2日だからなって書いてある。しばらく見ないフリをしていたのだが、さすがに9月末になるとヤバいと感じて曲のコピーに取り掛かる。20年経つと世の中変わっていないようでしっかり変化しているものだ。曲名をGoogle検索すればミュージシャン本人が演奏してる動画からどこかの誰かが採譜したPDFはては運指を解説した動画までじゃかじゃか出てくる。曲名の分からない音源はiPhoneでsiriちゃんに訊けばちゃんと答えてくれたりもする。なんて楽勝なんだ、と適当にコードだけ押さえて勝ったも同然、と夜な夜な酒を飲んでしまってろくに練習しないまま練習日を迎えることになった。


本番と同じステージで練習するのだ
10月2日、台風直下の日曜日、八代のRestaurant Barステージで最初の練習が始まった。プロ級手さばきのドラムス君は26歳だという。キーボード氏はやたらと上手い。以前と変わらぬのはベース氏とカリスマアフロT氏だけである。しかも二人とも20年前に比べると格段にプロ化している空気ばりばりである。懐かしい同窓会気分でやってきたのは僕だけなのであった。なんすかこのアウェイ感は。
練習後のコーヒータイムひやひや

3時間ほど練習し、コーヒー飲みながら次回の練習は・・・なんて話題に移ると実は冷や汗だらだらなのであった。いつ「あ、君は次回来なくてもいいよ、本番は客席で楽しんでね」なんて言い出されるかもしれないとなるべく皆と目を合わさぬようにしてたのであります。でも幸いにして「次回は19日ね、で本番は11月2日だから。リハ含めてあと2回やったらどうにかなるでしょ」って感じで解散。首の皮一枚繋がってる気がしたがいやまだまだ油断は禁物だわ、と帰りの車の中でもずっとiPhoneで録音した練習音源を聴きながら緊張を続ける49歳であった。そのうちにあらこれってアスペクタに出る直前の気分と一緒じゃないかとふと気づく。
テレビ見ながらスケール練習とか学生以来だ

それからは我ながらよく練習したもんだって思う。早起きしたらとりあえず運指の基礎練です。左指は案外動くようになったけど右手のピッキングがダメダメ。考えたらここ数年はずっとピック持たずに指弾きばかりしてたのだった。だから家でテレビ見てるときもずっとギター抱えてスケール練習してた。一度やり始めるとだんだん指が動き始める感覚が懐かしくも楽しくて思いのほか熱中してしまった。

しかし前回の練習音源を聞き返すたびになんか僕のギターがバンドと合ってない気がしてくるのだ。へたくそなだけかもしれないけど、いやこれはトーンの問題ではないかと思い始めた。テレキャスの出す音が浮いてる気がして、どうしようこれからセミアコでも買いに出ようかなんて真剣に考えてもしたんだけど、あ、そういえば俺ストラト持ってるじゃん、と。95年にアメリカを旅した際、LAのサンセット通りにあるCarvinギターのショップに通ってカスタムモデルを持って帰ったのだった(あのころは今と違って強烈な円高だったのでその勢いで。といっても10万円くらいだけど)。その後一度だけ天草の海水浴場で演奏した際に使っただけでずっとお蔵入りさせていたことを思い出した。

ロス生まれのストラトを復活
引っ張り出すと茶色いボディは見事なまでに白濁し、ピックアップセレクタは壊れ、ガリだらけのボリュームをどうにか誤魔化してアンプに繋いでみるが、どうして僕はこんなギターを買ってしまったのだろう、と首をかしげる以外の反応は出てこなかった。なんだかパワーばかりあるが無機質で味わいのないトーンしか出てこないのだ。

壊れたセレクタを換装した
それでも諦めきれない僕はギターを分解し、壊れた部品を検索してAmazonに発注し(1200円だった)、数年ぶりに半田ゴテを握ってとりあえず音の出る状態にまで復活させてみた。楽器とは不思議なもので持ち主が気合いを入れて弾き始めると、しっかり反応してくれる。何となく鳴りが変わってきた気がする。でもアンプを通すと相変わらずつまんない音しか返ってこない。諦めていつものテレキャスで演奏しようと何度も考えたけど、それでもなんか気に掛かってアメリカ野郎を手懐けようと僕は一所懸命。

その後2度にわたりCDが届き課題曲はどんどん増えて23曲に。
実は簡単なことだった。ピックアップの高さを調整したら驚くほど音が変わったのだ。きっかけは誰かのブログだった。ピックアップを交換したら音が良くなるかも、とググっていたところ「1mmでも高さを調整したら驚くほど音が変わるよ」って文字列を見つけたのだった。それくらいわかっとるわい、と思いつつドライバーでグルグルしてるうち、確かに95年LAの店で聴いたあの音が返ってきたのである。枯れたハーフトーン。心地よいセンターピックアップ。神経を逆なでするリアピックアップ。甘いフロント。僕は何時間も掛けていろんな弾き方とピックアップの高さを試し、今度のバンドにしっくりくるトーンを探し出す作業に熱中した。手を掛ければかけるだけ気持ちよく反応してくれるだなんて、まるでうちの柴犬みたいじゃないか。

親子以上に年の離れた混成部隊
10月19日は二度目の練習。今回は復活させたストラトを持ち込んだ。しつこいほどにギターパートはコピーしてきたので(といっても弾けてるわけではないのだけど)前回ほどの緊張もなくギュンギュンというギターサウンドを楽しむ余裕も出てきた。そしてiPadに仕込んだEvernoteに歌詞やコード進行、音源などを貼り付け、その画面を見ながら修正したり同時に録音したりというなかなかにハイテクな態度が21世紀バージョンの練習風景なのです。

デジタル機器も活用しての練習
あとはちゃんと弾けるようになるまで練習して、かつソロパートでの派手なアクションとか衣装とかカツラとかサングラスとかといった小物を揃えて最後は観客さえしっかり酩酊してくれればあとはどうにか・・・なんていつものいい加減さも復活してきた。それでも本番までの2週間、散歩中はネタ曲を何度も聞き返し、仕事の合間にはヘッドフォンアンプで練習するという僕にしてはとても生真面目な態度で過ごしたのでありますよ。

てなわけで長くなってきたのでまたつづきます。

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