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Peterson Guitarspecial MkII 75W(ギターアンプ)を修理した

20年ほど前に購入したギターアンプを最近になって修理したって話です。
置物と化していた頃のピーターソン

ネットで探したらこの絵が
出てきたので拝借、すみません
初めてエレキギターを弾いたのは高校1年の春だったので35年ほど前である。親しくしていた同級生が隣県の進学校に入学することになり、寮には持っていけないので預かっといてくれるか、とYAMAHAのレスポールカスタムモデル(SL-550)と同じくYAMAHAのJ-25というアンプをセットで貸してくれたのだ。それまで姉から借りたフォークギターが唯一の楽器だった僕はすぐさま電気楽器製品の虜になり、学校から帰ってはアホのように弾きまくっていた。そういえば近所から文句も来たらしい。

大学に行っても相変わらずギターばっかり弾いていたのだけど、仕事を始めてからは音楽からずいぶんと遠い生活になってしまっていた。たまに酔っ払って部屋のテレキャスを弾いたりもしたけど、アンプに通したりとか人前で演奏するなんてことはなく、思い出したようにヘッドフォンを繋いだMTRで遊んだりする程度だった。

故K野さんと奥にピーターソンアンプ
(1994.8.20アスペクタ)
25歳で親が経営する会社に入ることになり八代の実家に戻ってきたのだが、お客さんの一人から「バンドやろうぜ」と声をかけられると、あっという間に演奏の世界に戻ってしまった。その後八代の地元のバンドに複数誘われ夜な夜なフィリピンクラブやダンスパーティや結婚披露宴などで演奏したりしてたのだけど、当時入ってたバンドのキーボーディストでぶいぶい言わせてたK野さんから「お前もそろそろちゃんとしたアンプを買わないといけない、ちょっと高いけど良いアンプがあるから買え。買うなら俺から買え。もちろん新品だ。」と妙な迫力で迫ってくるので、まあそれも良いかと「そんじゃ買います」と返事したのだった。しばらくしてブツが届けられ、納品書を見ると20万円を越していたので軽く唸ったのだが、当時独身だったし他にお金を使うこともあんまり無かったからまあいいか、と現金かき集めて支払った。

それからは練習スタジオではもちろん、演奏する機会があれば必ず車のトランクに入れてあちこち一緒に動いていく僕の良き相棒となった。FETアンプだからそんなに大きくないし(けっこう重たいが)、それなりにでかい音が出せるし、クリーントーンもディストーションサウンドもつまみをちょっと動かすだけでいろんなキャラクターが作れたりするのでレゲエからファンクまで僕のテレキャスの相棒としてなかなかの活躍ぶりだった。
その後結婚して子供ができたり仕事の関係で熊本市内に引っ越したりしてるうちに八代のバンドからも呼ばれなくなってしまい、また仕事中心の生活に戻っていった。1996年くらいの話です。それからものすごく時間が経ってまた昔のバンドで演奏したって話はこないだ書いたっけ

修理に出す前のピーターソンギタースペシャルMk2
ようやくピーターソンのアンプの話になるのですが、その20万くらい払って買ったアンプがそれです。
ずっと薄暗い納戸に隠されていたのだけど2008年に人前で演奏するちょっとした機会があり、久々に電源を入れてみたところ、ボリュームを回すたびにそれはものすごい爆音のガリが鳴り渡る。柴犬が気絶しそうなレベルで。どうやらホコリかサビが悪い影響を与えたらしい。

ギター工房に預けて忘れるの図
当時ギターの調整を頼んでいた地元のショップに持ち込み「ついでにこのアンプも見てくれない?」って預けてみたんだが、そのまま3年くらい見事に忘れてしまい店に預けっぱなしになってしまった。2011年にまた演奏する機会ができたので、あっそういえばと思い出し、恐る恐る店に出かけたらまだ置いてあった。長らくすんませんでした、と詫びを入れて持って帰ってきたんだが今度は完全に音が出なくなっていた。そりゃそうだ。

修理するのならまず購入した店に相談すべきだと誰もが考えるはずだ。ところが残念なことに僕にこのアンプを売ってくれたK野さんは若くして草葉の陰に逝ってしまったのです。いま考えても本当に残念なのだけど、音楽の才能と爆笑ユーモアではち切れんばかりの人だった。練習中にはコードが違うとかうるさいとかマジメに弾けとかよく叱られたが、練習後には爆笑話の弾丸トークであやうく過呼吸になるまで家に帰してくれなかった。いまでもたまに練習中に声が聞こえてきそうになる。だけどアフターサービス期間はもうとっくに過ぎていたのだ。

自力修理も試みたものの
ある日、まるで機能していない割に置物としては少し大きすぎるこの木箱を今後どうしたもんかな、なんて考えを巡らせていると、そういえばインターネットってもんがあった、と気づいた。いまさらながらネット検索してみると、いくつか情報がヒットするではないか。しかしどうしてネットで仕事してる僕がことこのアンプのことになるとまったく検索しようともしなかったのだろう。完全に購入時の90年代で頭が止まっていたようだ。ともあれ以下のことがだいたいわかってきた。

  1. ピーターソンはイギリス製である
  2. 当時の輸入代理店はもう存在していない
  3. そればかりかピーターソンというメーカー自体もう存在していないようだ
  4. ボリューム関係のガリトラブルはけっこう有名みたいだ
  5. 国内のユーザーはそう多くないようだがけっこう自前で部品交換したりしてるみたい
  6. 名古屋の楽器屋さん修理をしたぞってブログに書いているのを発見した

ティッシュの箱・・・
というわけでその名古屋の楽器屋さんにメールを書いてみることにした。
数時間もしないうちに返事が来て「修理できると思います、送ってみてください」ってことだった。
連休明けに近所からダンボールをもらってきて梱包し、さっそく送ってみた。
メールとFAXで修理見積もりが届く。ポット9個全交換にジャック交換、ついでにハンドルも交換してしめて24,300円。それなりの新品アンプが買える値段だ。でも長い付き合いだし、あの音をもう一度鳴らしたくなったので修理をお願いすることにした。
数日後、送った時と同じダンボールでピーターソン君が戻ってきた。


お、なんか返ってきたぞ
さっそく電源を入れ、ギターを繋ぐとおお、当時のあの迫力あるトーンが鳴りはじめた。ボリュームポットは全交換してもらったのでガリなど全くなくとてもスムーズだ。テレキャスとストラトを交互に接続し、そのへんに転がってるアタッチメント類を入れ替え差し替えして遊んでるうちに深夜になり妻にいい加減しなさいと叱られた。



交換した旧部品も同梱されてた
ピーターソンは2チャンネルの回路を切り替えることができる。フットスイッチを押すとノイジーで迫力満点なディストーションサウンドが響く。BOSSのオーバードライブよりもガツガツくるトーンだ。そうなるとデジタルディレイとコーラスはセンドイン・センドアウト回路に接続して歪ませる前で掛けるのがよろしいよな、とすっかり20年前の感覚が戻ってきた。こんな感じもひとつ


すっかり新品同様に
次の演奏機会は当面ないんだけど、一日いちどはアンプに電源を入れて音を出す生活が始まった。とりたてて曲を練習するわけでもなく、ただ音を出して喜んでいるだけ。面倒くさいので最近はギターとアンプは直結だ。その方がリアルに音を実感できる。


30年前に東京で買ったESPのテレキャス、20年前にロスで買ったCarvinのストラト、20数年前にイギリスで作られたピーターソンのアンプ。

考えてみたらどれもスタンダードな製品じゃない。誰もが認める一流ブランドってわけでもない。もちろん二流でもない。ぱっと見には標準的だけどちょっと違う音が出てしまうのだ。それは奇妙な癖でもあるけど、長い間付き合ってくるともうその音色でないと満足できないようになってくる。誰もが乗りこなせるわけではないマシンを調教することが楽しみになってくるし、それができれば誇らしく思えてくる。

なんとも僕らしいと思うけどまあだいたいそんな話です。

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