2015年10月11日日曜日

2015年8月に読んだ本の記録

2015年8月の1ヶ月間、7冊しか読んでいなかった。休みも多かったし時間はたっぷりあったはずなのになぜだろう。8月だからなのか、戦争関係の本が増えてたみたい。

期間 : 2015年8月1日 ~ 2015年8月31日
読了数 : 7 冊
野火
大岡 昇平 / 新潮社 (1954-04-30)
読了日:2015年8月31日
塚本晋也監督の映画「野火」を見た翌日にダウンロードした。中学か高校の頃、クラスの誰かが読書感想文を書いていたような記憶があるが当時僕は読書とか感想文とかが苦手だった。映画を観て衝撃を受けた後やはり原作を読まねばと思い、手にしてみるとあの凄まじい映像のほとんどが原作に忠実だったことに驚かされる。これからは僕みたいに映画を観たあとに原作を読むという人間が増えていくのだろう、おそらくは世界中に。
映画になく原作に色濃かった視点は神である。しかしなぜか宗教的な気配はまるで感じさせない。それはたぶん田村が醒めているからだろう。目の前の戦争からも宗教的な熱狂からもできるだけ距離を取ろうとして、冷めている。それは田村が「インテリ」だからだと思った。
田村は自分の頭で考えたことしか信じようとしない。容易に他者の熱弁に巻き込まれそれを自身の本意だと信じてしまう人間を遠ざけようとする。だけど彼は自らの本能だけからは逃げることができない。その本能をセットした神を思いながらそれでも醒めているべきなのだと思い悩み、彼は壊れてしまう。それも彼が「インテリ」だからだ。一方で戦争を始めるのもまた別の「インテリ」だ。

戦場やジャングル、街に灯された野火に導かれたインテリは自らも炎を灯そうとマッチを探し、無辜の人間の命を奪う。世界中あらゆる場所で繰り返される人類のカルマを止めることはできるのだろうか。
満洲難民 三八度線に阻まれた命 (幻冬舎単行本)
井上卓弥 / 幻冬舎 (2015-05-27)
読了日:2015年8月31日
読み終わった直後にヨーロッパになだれ込むシリア難民のニュースを見た。たぶんこれまでだったら「日本は安全で良かったなあ」としか感じなかったことだろう。だけどこの本を一度読んでしまった今ではもうそんな感想が出てくる余地はない。

先日読んだばかりの「野火」も凄まじい小説だった。しかし本書が取り扱うのは主に女性と子供たちである。しかもシベリアに抑留された日本兵の妻や子どもたちだったケースも多いという。とにかく悲惨の一言に尽きる。もし現代であれば国際的な大問題となっていたことは間違いない。しかし敗戦直後、しかも放棄された植民地からの難民、かつ動乱の北朝鮮国内という状況が重なり、今に至るもほとんどの日本人がその実態を知らないのだ。

僕の父も満州生まれである。10歳のころ引き揚げたはずだあまり多くを語ろうとしない。数年前になく亡くなった祖母は時おり話をしてくれたがでも楽しい時代の話ばかりだった。少しだけ歴史がずれていたら僕だってどこに生まれていたか、わからないのだ。

シリアの難民はもう他人事ではない。
特攻――戦争と日本人 (中公新書)
栗原 俊雄 / 中央公論新社 (2015-08-24)
読了日:2015年8月30日
「生き残った者にとって都合のいい記憶と記録は語り継がれ読み継がれて史実になってゆく」という文章に傍線を引いた。 敗戦を終戦と言い換えるがごとく、自爆攻撃を特攻と言い換えるのは不義理ではないか。僕の親戚も含めて多くの老人が「神風特攻隊をイスラムの自爆テロと同一視するとは何たることか」という。だがこうして歴史を振り返ってみるとカミカゼが紛れもないテロであったことが判る。敵軍に対するテロではなく日本の若者に対するテロである。恐怖を蔓延させ、個人の判断を束縛し、その行動を制約する、上層部によるテロ行為に他ならないと思う。

特攻を神聖視する風潮には強く抵抗したい。戦艦大和の水上特攻も同じだ(被害者数ではカミカゼと同じ4000人超だという)。「強い精神をもってすれば奇跡が起こるのだ」的な考え方を徹底的に批判し反省したその上に立たないことには未来はないと思う。

特攻を考案し、指揮した当時の日本軍上層部とほぼ同じ年代になった。以前とは違い、命令を下す側や子供を失った親の目線であらためて悲惨で空虚な戦術について考え直すきっかけとなった。

sesion22で著者の話を聞いてAmazon購入。
社会保障が経済を強くする~少子高齢社会の成長戦略~ (光文社新書)
盛山 和夫 / 光文社 (2015-02-20)
読了日:2015年8月27日
著者の主張は消費税を増税してでも医療や介護、年金を充実させた方が日本経済は成長する、というものだ。データを元にこれまで数多く説明されメディアはもちろん国民の多くが信じてきた財政再建重視、コストカットの社会運営が実は逆効果であることを証明していく。たとえば家庭内で完結していた食事を外食に移行させるとその分だけGDPが増え、雇用も生まれるといった感じで、介護にしてもそのように社会で共有し、経済の中に組み込んだ方が良いのだ、という考え方である。

基本的にはその通りなのだと思う。国民経済や国家運営を企業経営や家計と同一視した稚拙な感情論には辟易としていたからなおのことだ。でも何かすっきりしない部分が残るのだ。何もかも消費として経済行為に移せばよいのだろうか。GDPの成長がそんなに大切なことなのだろうか。ただの指標に過ぎない数値を上げるために社会を変えていくことは手段と目的の混同ではなかろうか、なんて思ってしまう。そのうち家庭内の夫婦生活だって外部化すれば経済発展に繋がる、なんて議論がまじめに始まるかもしれない。

医療に関わる人間であれば目を通しておくべき議論だとは思う。
レノンとジョブズ (フィギュール彩)
井口 尚樹 / 彩流社 (2015-06-23)
読了日:2015年8月22日
新聞の書評で見かけて買ってみた。僕も実は二人って似てるよなあと感じていたからだ。
本書が届き読み始めてしばらくは戸惑いの連続だった。著者の表現する日本語のリズムが僕のそれとあまりにも違っていたからだ。体言止めにつぐ体言止め。書いてある内容もほとんど著者の妄想でしかないようだし、これまたとんでもない本を掴んでしまったものだ、と後悔した。
ところが数日経ってまた読み始めると、いつのまにか文体のリズムに適応しているではないか。ビートルズ関係を掘り下げていく章に入ったこともあり、知らぬ間にぐいぐい読み始めていた。
10年以上前だけど、著者と似たようなことが書かれていたブログがあったことを思い出した。
今検索してみたけどもう見つからなかった。もしかしてその時の作者がこの著者なのかなあと思ったくらい内容は似ていた。たぶん違うと思うけど。

なんでも日本の功績に関連づけてしまうあたり、あんまり格好良くないなあと感じることも多々。言霊から発生して「実は何でも繋がっている」みたいな陰謀論にまで発展しそうな勢いだけど、でもまあこういうエッセイ的な本だと別にそれでもいいわけで、誰かの頭の中に浮かんで掲載されていくひとつの世界を世に問うという行為自体、娯楽の根本とも言えるわけだし。

「フール」な男がまたここにもひとりいたって話だ。
火山入門―日本誕生から破局噴火まで (NHK出版新書 461)
島村 英紀 / NHK出版 (2015-05-08)
読了日:2015年8月17日
久しぶりに日替わりセールで。時節柄、とっちらかった知識の整理に役立った。
"日本列島は、地球の誕生以来の46億年の歴史を1日にたとえれば、わずか6分前に初めて生まれた若い島だ。"と書かれていて、なんとなく日本は古い国だってイメージを持ってたけど地質学的には全然そんなことなかったと驚いた。そりゃ火山も地震もアクティブなわけだ。

それでも火山の一つ一つはとても個性的であり、一概に危険だからすぐに逃げるべきだという話にもならない。まったく予兆なく噴火する山もあれば予兆だけで噴火しないこともある。我々の科学はまだそんなメカニズムの足元にちょこっとかぶりついてる段階だ。それでも莫大なエネルギーを内に秘めた地球の姿を研究し、理解することは人類にとってとても大切なことだということがじわじわ伝わってきた。
希望の国のエクソダス
村上 龍 / 文藝春秋 (2000-07)
読了日:2015年8月12日
発売当時にすぐ買って読んでいたんだけど引っ越しのゴタゴタでどこかへ行ってしまった。新刊「オールド・テロリスト」を読み終えたので懐かしくなりもう一度読んでみようとブックオフで取り寄せてみた。
15年前の予想は不気味に当たっていることもあり、そうでないこともある。一番の違いは日本経済がここに描かれるほど壊滅的な凋落しなかったことだろう。その要因は何だろうと考えながらページをも繰る。思いついたのは9.11同時多発テロでありその後のアフガン・イラク戦争だ。もちろんこの本にそんな歴史は想定されているはずがない。ということはもしかしたら日本が経済的に崩壊しなかったのはアメリカの戦争のおかげだったのかもしれない、と思いついた。
まさにそのアフガニスタンからこの物語はスタートする。現実に起きた歴史と、もうひとつの物語世界を微妙に分けたの事件について思いを馳せるときまた違う物語がスタートする。それがきっとオールド・テロリストなのだろう。

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1965年2月生まれ。お仕事は歯科に関するITとかです。