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2016年の1年間に読んだ92冊の記録

メディアマーカーのHTML出力機能で作りました。読了した逆順(新しい順)にずらっと並べてるだけです。あんまり誤字とかチェックしてないです。

期間 : 2016年
読了数 : 92 冊
ハワイの歴史と文化 悲劇と誇りのモザイクの中で (中公新書)
矢口祐人 / 中央公論新社 (2002-06-25)
読了日:2016年12月30日
安倍首相によるパールハーバー訪問を題材としたセッション22に著者が電話出演していたのを機にダウンロード、深夜に読んだ。真珠湾攻撃といえば南国の楽園に日本軍が奇襲攻撃、というイメージを持っていたがそれが正確でなかったことを知る。アメリカ系白人によるクーデターによって米国に併合され太平洋上の最も重要な軍事基地として整備されていく歴史や、さとうきび栽培のために日本はもとより世界中から労働者が集められていたという歴史にあまりにも無頓着だった。戦後、大衆向けの一大観光地として島を挙げてのマーケティングが進められたことや、その陰でさまざまなルーツを持つ島民たちの葛藤が続いていたことなども僕にとっては新鮮な知識だった。考えれば考えるほど日本における沖縄と相似形なことも。たった1冊の新書とラジオ番組で僕のハワイ観がより重層的なものとなった。
シベリア出兵 - 近代日本の忘れられた七年戦争 (中公新書)
麻田 雅文 / 中央公論新社 (2016-09-16)
読了日:2016年12月25日
折しもプーチン大統領が来日して北方領土問題についても話し合われている時期にシベリア出兵について学ぶことになった。1918年から1925年まで7年間にわたって宣戦布告もなしに大量の日本兵が送り込まれたこの戦争についてはほとんど知らないことばかりだった。昨年の今ごろ読み耽った石光真清の自伝とシンクロする部分も多かった。多くの日本人にとっては「ソ連は一方的に不戦条約を破棄して満洲に侵攻し多くの日本人を長年にわたって抑留した」という認識が常識だけど、わずか20年前にロシア革命に乗じて大量の日本軍がシベリアに展開していたことや双方で多くの人命が理不尽に奪われたことも合わせて知っておくべきだと感じた。いわゆる北方領土問題もそうした一連の歴史が表す一角にすぎないことも。
アド・バード (集英社文庫)
椎名誠 / 集英社 (1997-03-16)
読了日:2016年12月24日
いまから30年くらい前に書かれたSF作品だけど、気がつけば僕らの周囲にはありとあらゆるリアルな広告に満ち溢れ、プロジェクション・マッピングやVR、ARなどによる仮想世界が現実に深く入り込もうとしている。その意味では非常に正確に未来を予測した作品だったことがわかる。ふと筒井康隆の処女作「幻想の未来」をまた読みたくなった。
汝の名はスパイ、裏切り者、あるいは詐欺師 インテリジェンス畸人伝
手嶋龍一 / マガジンハウス (2016-11-17)
読了日:2016年12月10日
昨年、所属している業界団体が忘年会に著者の手嶋氏を招聘して講演を聴いたのですが、今年もまた手嶋氏を呼ぶことに決まったと聞いて予習を兼ねて購入。スパイ小説的なちょっと気取った語り口で実在のスパイや小説の世界のスパイを行き来しながら世界の畸人たちを紹介していく本でした。エッセー的に読めて楽しいのですが、この本だって著者ならではの巧妙な仕掛けが施されてる可能性もあるわけで、そんなところまで想像しながら楽しむのが流儀かなあと。
腰痛探検家 (集英社文庫)
高野秀行 / 集英社 (2010-11-24)
読了日:2016年12月4日
kindleの日替わりセールで案内され即刻購入199円。長年の腰痛が悪化し、どうにかして治癒しようと奮闘する1年あまりのエッセイだが僕もちょうど同じころ(40代)に頚椎ヘルニアを発症し、あちこちの病院や整骨院を彷徨っていたので爆笑しながらでも笑ってばかりいられない話だった。けっきょくのところいったん現状を受け入れ、日常の行動一つ一つを見直していくしかないのだ。「あの日に帰りたい」と奮闘したところでそれはできない相談だ。我が身を襲った悲劇に固執することは状況をいっそう悪化させるだけだと、いったん諦めながらしつこく明るく再発のない生き方や再発してもダメージを少なくする準備を実行していくしかないのだ。なんか地震とか原発事故後の話みたいになってきた。
夜を走る トラブル短篇集 (角川文庫)
筒井 康隆 / KADOKAWA / 角川書店 (2015-01-25)
読了日:2016年11月29日
大名行列の話を読み直したくてダウンロード。たしか高校生の頃に文庫本で読んだのだと思う。面白いものでよく憶えている話もあればちょっとだけ憶えてる話もあったりして。だいたい下らないフレーズに限って残っているものだ。

経理課長の放送・・・よーく憶えてた
悪魔の契約・・・・・読んでたら思い出した
夜を走る・・・・・・これって関西に引っ越す前に読んだんだなあ
竹取物語・・・・・・筒井康隆だったのか!という感じで記憶してた
腸はどこへいった・・・これ漫画もあったような
メンズ・マガジン一九七七・・・当時良くわからなかったことが今ではわかるw
革命のふたつの夜・・純朴な学生には刺激が強すぎると思ったことを思い出した
巷談アポロ芸者・・・僕だってアポロ初着陸の時はテレビでみたよ
露出症文明・・・・・これってFacebookの予言だよなあ
人類よさらば・・・・忘れてたなあ。落語だ。
旗色不鮮明・・・・・ネット時代に読み直すと奥深いものが
ウィークエンド・シャッフル・・・よく憶えてた。21世紀には無理な小説。
タイム・マシン・・・当時の冷戦→世界大戦→人類滅亡は今よりリアルだった
わが名はイサミ・・・この文体には影響受けた
ノベライズ この世界の片隅に (双葉文庫)
こうの史代 , 蒔田陽平 / 双葉社 (2016-10-13)
読了日:2016年11月24日
まだまだ続く「この世界の片隅に」マイブーム。このノベライズ版は撮影開始時のプロットになったらしく、原作漫画にも映画版にもない物語がいくつか残っていて、そういうことだったのか・・・という新しい発見が幾つかあった。また映画を観ていても気がつかなかった描写を文字で読み直すとより深い理解に繋がる気がするのはやっぱり僕が活字メディアが好きだからなのだろうとも。いつかDVDあたりでこの小説を元にした完全版の映像が実現すると良いなあ。
夕凪の街 桜の国 (アクションコミックス)
こうの史代 / 双葉社 (2004-10-12)
読了日:2016年11月18日
この世界の片隅に続けてKindleで購入。本当によく仕組まれた作品だけに、3回ほど通読してようやくそれぞれの物語の関連性を把握することができた。こちらの映画化作品はまだ見ていないけどいつか見てみたい。
この世界の片隅に : 下 (アクションコミックス)
こうの史代 / 双葉社 (2009-04-28)
読了日:2016年11月17日
映画を観ておおいに心揺さぶられ、帰りのバスでKindle購入。
その後も中・下と3冊購入してiPadで読み耽った。安易な批評など許されない完成度の高さだから僕が今さら書くこともないのだけど、世相が大きく変わろうとしているように感じる2016年という時期にこの作品に出会えたことを感謝したい。説教臭い話ではなく3分おきに笑える物語なところがいっそう凄いと思うのです。しばらくは80年前の彼ら彼女らが生きた日本と現代をオーバーラップさせながら生活してしまいそう。
この世界の片隅に : 中 (アクションコミックス)
こうの史代 / 双葉社 (2008-07-11)
読了日:2016年11月17日
映画を観ておおいに心揺さぶられ、帰りのバスでKindle購入。
その後も中・下と3冊購入してiPadで読み耽った。安易な批評など許されない完成度の高さだから僕が今さら書くこともないのだけど、世相が大きく変わろうとしているように感じる2016年という時期にこの作品に出会えたことを感謝したい。説教臭い話ではなく3分おきに笑える物語なところがいっそう凄いと思うのです。しばらくは80年前の彼ら彼女らが生きた日本と現代をオーバーラップさせながら生活してしまいそう。
この世界の片隅に : 上 (アクションコミックス)
こうの史代 / 双葉社 (2008-01-12)
読了日:2016年11月16日
映画を観ておおいに心揺さぶられ、帰りのバスでKindle購入。
その後も中・下と3冊購入してiPadで読み耽った。安易な批評など許されない完成度の高さだから僕が今さら書くこともないのだけど、世相が大きく変わろうとしているように感じる2016年という時期にこの作品に出会えたことを感謝したい。説教臭い話ではなく3分おきに笑える物語なところがいっそう凄いと思うのです。しばらくは80年前の彼ら彼女らが生きた日本と現代をオーバーラップさせながら生活してしまいそう。
「シン・ゴジラ」、私はこう読む
日経ビジネス / 日経BP社 (2016-10-25)
読了日:2016年11月12日
日系ビジネスオンラインに連載された各界のシン・ゴジラ評を電子書籍にしたてたもの。思いのほか文量があってキャンプ中などにちらちら読んだ。いろんな立場の人がそれぞれ感じたことや思い入れをうんちく総動員して語る、いや語らずにいられないという作品をこしらえるのは大変だったろうけど生きた証としてこれ以上のことはないんじゃ無いかなとも。
魔境アジアお宝探索記 骨董ハンター命がけの買い付け旅 (講談社+α文庫)
島津法樹 / 講談社 (2007-02-20)
読了日:2016年10月30日
高野秀行氏の本で紹介されてたのですぐにダウンロード、読み始めたらあまりにも面白すぎてやめられないとまらない状態に。何だろうこの文章のリズムというか独特のグルーブは。こういう作品に出会えると「掘り出し物」ってあるんだなあと思う。古物のことはさっぱりだけど、ノリキさんのスタンスはとてもイノセントでいいなあと思った。他の作品も読んでみたい。
新装版 武装島田倉庫
椎名誠 / 小学館 (2013-11-11)
読了日:2016年10月26日
これまた高野さんのお勧めで知った作品。椎名誠の作品はごく初期(高校とか大学生の頃)に何冊か読んでたけどほとんどがエッセイ風の作品だった。でもこれはSF作品で、どこか筒井康隆テイストでたとえば「旅のラゴス」みたいな乾いた情緒を漂わせている。あるいはマッドマックス風なディストピア感も。大好物だ。
【カラー版】辺境中毒! (集英社文庫)
高野秀行 / 集英社 (2011-10-25)
読了日:2016年10月15日
高野さんの本は見つけると片っ端から読むことにしている。絶対に外れないからだ。Kindleで読み始めるとこの本もまた面白くて、ここで紹介されていた作家や本をまたAmazonで注文してしまうというループに。まさに高野中毒なのです。
1時間でハングルが読めるようになる本 ヒチョル式超速ハングル覚え方講義
チョ・ヒチョル / 学研プラス (2011-08-23)
読了日:2016年10月2日
今月末に釜山に行く予定ができたので、泥縄式だけどあの暗号みたいにしか見えない文字の解読方法でも予習しとこうかなと。台湾や北京だと漢字みてるだけでなんとなく地名や施設がわかるけど韓国だとそうもいかないだろうし。この本はとてもよく構成されていてさすがに1時間とはいわなくても3時間ほど取り組めばすくなくとも「読む」まではどうにかできるようになれそうだ。もちろん意味はわからないけど。日本語と近い言語だとばかり勝手に考えていた韓国朝鮮語だけど、発音的には英語っぽい部分(子音で終わるとか)が多いのだなあというのも発見でした。
仕事で使える!Googleスライド クラウド時代のプレゼンテーション活用術 (仕事で使える!シリーズ(NextPublishing))
丹羽 国彦 / インプレスR&D (2015-08-28)
読了日:2016年9月28日
アンリミテッドで。歯科医師会の発表直前に読んだ。もうちょっと制作環境に慣れたらキーノートは要らなくなるかもしれない。でもまだまだ作る段階ではキーノートの快適さが数段上だ。実際野運用を考えたらGoogleが断然便利なんだけど。
検証 東日本大震災の流言・デマ (光文社新書)
荻上 チキ / 光文社 (2011-07-01)
読了日:2016年9月27日
2011年の311直後に出た本だけど未読だった。今回Unlimitedになったのでちょっと読んでおくかと。しかし読み始めて後悔した。5年前に読んでおくべきだったのだ。少なくとも熊本地震の前には読んでおくべきだった。自分では「デマに振り回されるほどナイーブじゃないぜ」なんて思ってたのに、5年前に流れた流言・デマのなかにまだ僕はそれが真実だと思い込んでいたものをいくつか見つけてしまい驚いた。「たとえそれがデマであっても被害の拡大を少なくする方向の話ならある程度は仕方がない」みたいな話はよく耳にするがそれはとんでもないことだ。自分が専門とする仕事に当てはめてみたらすぐに理解できる。たとえば「歯を磨かせるためにであれば、歯みがきをしない人間は純粋な日本人ではない」みたいなデマを許せるか、みたいなことだ。そうでなくても「ネットをやり過ぎると将来きっと禿げる」と子供に教えることは正しいことだろうか。良いデマなんてのはけっして存在しない。ではどうするか、というのがこの本の主題だけど、一筋縄ではいかないところが難しい。それでも真剣に取り組むべき現代社会の一大テーマだと思う。
だいたい四国八十八ヶ所 (集英社文庫)
宮田珠己 / 集英社 (2014-01-22)
読了日:2016年9月21日
Kindleのお勧めでダウンロードしてたけど読了するまで2ヶ月もかけてしまった。といっても実際に読んだのは2日間ほど。今年は高知にご縁があって何度も出かけたので四国の描写が面白かった。僕も死ぬまでにいつかお遍路に行くことがあるだろうか。スマホの充電しなきゃとWi-Fi確保しなきゃとか考えてるうちは行っちゃダメなきもする。ダメじゃないだろうけどそれじゃ出張だもの。でもこういうのは望んでいくというよりいつか呼ばれてしまうものなんじゃないかって気もする。呼ばれなかったらそれはそれで。
飢えなかった男
小松左京 / 徳間書店 (1980-09-15)
読了日:2016年9月18日
これまたアンリミテッドで。こちらは多分読んだことがあるはずだ。表題作は憶えていた。でも他の作品、特に落語や芸事を題材にした作品にはまったく記憶がなく、というかいま読んでみても実体験や知識が伴わなくてよく理解できてない。あと30年後にはもしかしたら理解できるようになってるのかも。
首都消失 (徳間文庫)
小松左京 / 徳間書店 (2016-03-04)
読了日:2016年9月12日
Kindleアンリミテッドでみつけ、そうだ読もうと思っていたんだとさっそくダウンロード。シン・ゴジラを観ながら「なんか首都消失っぽいなあ」と感じたからだ。といっても小説を読むのはたぶん初めで、昔テレビのロードショーでやってた映画版を半分くらいみた程度だけど、小説を読み進めるうちに予感は確信へと変わり、確実にこれは影響与えただろうなあと。一方で80年代のニューメディアが華々しく取り上げられてて、なるほどそんな時代だったなあと懐かしく思い出しました。まだインターネットは概念すらなかった時代、日本の大企業や役人たちがまだまだ期待されていた時代に書かれた物語独特の空気感が強烈だった。
それでも、日本人は「戦争」を選んだ (新潮文庫)
加藤 陽子 / 新潮社 (2016-06-26)
読了日:2016年9月11日
著者がSession22に出演した回を聴いて興味を持っていたところ出先の本屋さんで見つけて購入、出張中や空き時間に読んだ。高校生を対象とした勉強会の再録というスタイルだけどまずは高校生のレベルの高さに驚いた。一つ一つの歴史的事件を記憶するだけの勉強ではなく、前後のつながりや同時代他地域の状況や、その時代に生きた一人一人の人生のなかでの位置づけを考えながら、当時どのように理解され判断されたのか、という視点に立つことはとても大切な勉強だと思った。その上で「なぜ日本人は戦争という手段を選んだのか、選べなかったのか、選ばなかったとしたらどのような選択肢・手段があり得たのか」という訓練を行うことこそが歴史学なのだと知った。右も左も適当な歴史観を繰り広げては「論破」して喜んでいるネットのオジサンオバサンもここから勉強し直さないといけないはずだ。
顔と名前を憶える本
松井 達治 / パブフル (2016-08-30)
読了日:2016年9月10日
同じ業界の知り合いが本を書いたというので探していたらKindleアンリミテッドに見つけたので風呂場で読了。受験参考書の歴史年号記憶術や英熟語語呂合わせをふと思い出すのでした。初対面で名前や見た目を拡大解釈して記憶する術ってのが出てきたけどそうなると僕なんかどんなイメージになるのかちょっと心配になった。
仕事で使える!Google Apps セキュリティー解説編 次世代クラウドセキュリティーの全貌 (仕事で使える!シリーズ(NextPublishing))
橋口 剛 / インプレスR&D (2015-06-12)
読了日:2016年9月1日
アンリミテッド。すっかりGoogleアプリばかり使うようになっているのでいちど頭の整理をと。9月に歯科医師会で講演するのでその準備にと。
仕事で使える!Chromeアプリ徹底活用 シナリオ別厳選アプリ一挙解説 (仕事で使える!シリーズ(NextPublishing))
深川 岳志 / インプレスR&D (2015-06-12)
読了日:2016年9月1日
アンリミテッドで。けっきょくChromeアプリはGoogleの方針で無かったことになるみたい。というわけで目を通した程度。
Chrome・Chromebook定番「拡張機能」セレクションズ (NextPublishing)
武井 一巳 / インプレスR&D (2015-08-21)
読了日:2016年9月1日
アンリミテッドで。クロームブック買ったのでお勉強。読んでいる最中にChromeアプリの開発中止が伝えられたりして・・・
浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)
カズオ イシグロ / 早川書房 (2006-11)
読了日:2016年8月22日
これも松山の本屋で。カズオイシグロを読むのは「日の名残り」に続いて2作目だけど、両作品とも主人公が微妙にどこかズレていてちょっとまともではないところが面白い。同時期に読んでいた村上春樹の主人公はいつでもニュートラルで読者が感情移入してしまうけど、これはちょっと違う。もしかしたらそれってイギリス的なのかもしれない。
パン屋再襲撃 (文春文庫)
村上 春樹 / 文藝春秋 (2011-03-10)
読了日:2016年8月21日
松山の本屋さんで何となく購入。2年ほど前に村上春樹本をブックオフで大人買いして一気読みしたのだけどこれは読んでなかった。表題作はなんだか他人事とは思えない夫婦の関係が面白かったし「象の消滅」はどこか小学生の頃に図書館で読んだまま忘れてしまった不思議話のようだった。ねじまき鳥の庭はたぶんうちの近所にもあるはずだ。まだみたことないけど。
旅の窓 (幻冬舎文庫)
沢木 耕太郎 / 幻冬舎 (2016-04-12)
読了日:2016年8月21日
松山の明屋書店本店で平積みになっていた文庫本。深夜特急の沢木耕太郎がスナップ写真とともに短いエッセイを書いているのだけど、これってどこかで読んだ気がするんだよなあとずっと引っかかっていた。そうだ成田空港の長い廊下に並んでいる「ナリタリスト」のポスターだ。あのポスターの作者たちもきっと沢木さんの影響を受けてるに違いない、と確信した。またいつか見知らぬ国を予定なく旅してみたいものだ。
満州国の最期を背負った男 星子敏雄
荒牧 邦三 / 弦書房 (2016-07-22)
読了日:2016年8月20日
これも熊本日日新聞の書評で知り注文。星子市長、とは彼の市長時代は八代市民だった僕も当時良く耳にした地元の有名人だった。だからこうして彼の満州時代や家族友人関係(奥さんが甘粕氏の妹だとか、近所に住んでた友人が元椛島知事の実家だったとか)を知るとまたまったく新しい観点から見直すことができたと思う。満州国やシベリア抑留について昨年いくつかの書物を手にしたけどこうして一人の人間を軸にして追いかけるとそれらの知識に具体性が増す感覚が得られ、貴重な読書体験となった。それにしてもナショナリストっていったい何なのだろう。現代で言うそれと明治期、戦争期のそれとはまったく違うものに思えてきた。新しい本なので先日の熊本地震にまで言及してて、復旧したら沼山津の横井小楠記念館にも行きたいなと思った。

上記文章をブログに書いていたら後日著者から丁寧な葉書をいただいた。ちょっと感激してしまいました。また良い本を書いて欲しい。講演会とかあったら出かけますよ!
仕事で使える!Googleフォーム Webフォーム&アンケート活用術 (仕事で使える!シリーズ(NextPublishing))
丹羽 国彦 / インプレスR&D (2015-05-22)
読了日:2016年8月19日
Kindleアンリミテッドを使って来月福岡のIT講演でお話する内容のネタ仕込みに。いくつかヒントを得た。実際この本で読んだ得たことは驚くほど役に立っていて、各種企画の日程調整から当日持参品アンケートなどだいたい毎月何度かは利用するようになった。仕事のやり方をかなり変えてくれた。
ロケット・ササキ:ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正
大西 康之 / 新潮社 (2016-05-18)
読了日:2016年8月18日
地元紙の日曜書評欄で知りAmazonに注文、出張先で読んだ。高度成長期のものづくり日本を引っ張ったプロジェクトX的な逸話だと思った。共創とはいかにも日本らしい考え方だし、当時はそんな発想こそが人々の生活を変える近道だったのだと思う。反面、100歳を超える老人が語る理想の自分史、という感じがしなくもない。本当にアフリカの民族衣装は彼のアイディアだったのかとかジョブズは佐々木氏のアドバイスでゲイツと組んだのだろうかとか。今日本の経営者やサラリーマンが読んで具体的に参考になることはたぶんないと思うのだけど、すっかり落ち目扱いされてるシャープがまたいつの日か世界の最先端に返り咲くことだってきっとあるだろう、そのために必要なこと、不必要なことってなんだろうとか考えるには良い題材なんだと思う。
マンガでわかる! 音楽理論
侘美 秀俊 / リットーミュージック (2016-03-25)
読了日:2016年8月15日
Kindleアンリミテッドを初めてみて、たまにはこういうのも良いかなと。
楽譜の読み書きには数学の素養がいるらしいことは薄々気づいていたけど、この本でそれが確信に変わった。とことん数学に弱い僕はこんなに簡単に説明されても途中でついていけなくなったからだ。ここまで音符が読めないのはある種の欠陥なのかいやもしかしたら才能なのかもしれん。
脳が壊れた(新潮新書)
鈴木 大介 / 新潮社 (2016-06-17)
読了日:2016年8月9日
鈴木氏の本は昨年読んだ「最貧困女子」に続いて2冊めだが、僕よりずいぶんと若い著者が脳の大病でリハビリ生活を送っていたとは想像もしなかった。でも恐ろしくロジカルに物事を捉えできるだけ正確に記録していこうとする態度には感服した。しかもユーモアにあふれている。そのうえ夫婦愛と来た。読んでいるうち「シリアスな病気だって克服できる」気になってきた。地震だって津波だって乗り越えて生き残ってきた人類の一人なんだから大丈夫な気がしてくる。今のうち予言しておくけど、たぶんこの作品は映画化かドラマ化されると思う。
実録!いかがわしい経験をしまくってみました
藤山六輝 / 彩図社 (2015-05-15)
読了日:2016年8月7日
夜中に目を覚ましてしまってKindleを弄ってたら安かったので買ってしまい、そのまま読み始めて朝になってたという学生みたいな読書スタイル。同じ内容がブログやネットマガジンだったら今ひとつ興味を持てなかったのだろうけどそれがKindleだと何となく最後まで興味が続くのだからなんか不思議。個人的には最後のヤクザに監禁される章が心に残った。また時間を持て余したら彼の本を買ってしまいそうだ。
怪獣記 (講談社文庫)
高野秀行 / 講談社 (2010-08-12)
読了日:2016年8月6日
これまたKindleで探して買ってみたけど、本当に高野本は中毒になる。いまシリアやクルドの難民、IS問題から軍によるクーデタ未遂で話題満載のトルコの、もう一つの姿が垣間見えた気がした。いま僕ら日本人は怪獣ゴジラに夢中だけど。
ナニワ金融道 カネと非情の法律講座 impress QuickBooks
青木 雄二 / インプレス (2016-03-07)
読了日:2016年8月3日
17年前、会社の代表に就任すると決まったときにまずやったことは近所の古本屋に出かけてナニワ金融道を全巻買って読んだことだった。当時は資金繰りこそが僕ら夫婦の仕事だったから他人事ではなかった。たまたまKindleのセールでこの本を見つけて読んだのだけどそんなことまで思い出して少し懐かしかった。あれから法律も少し変わったけど基本的な問題点は改善どころか深刻化している気もする。
教科書には載っていない!戦前の日本
武田知弘 / 彩図社 (2008-12-19)
読了日:2016年8月2日
AmazonKindleに勧められてすぐさまダウンロード、時間の合間に読んだ。先週読んだ「「日本スゴイ」のディストピア(早川 タダノリ)と併せて読むとちょっと角度が違ってて面白いと思った。かといってさほどの主義主張が強いわけでもなくちょっとした知識を並べて吸収するって感じで気軽に読めた。
ウナギ密漁 業界に根を張る「闇の世界」とは Wedgeセレクション
鈴木智彦 , Wedge編集部 / 株式会社ウェッジ (2015-09-11)
読了日:2016年7月31日
Session22に鈴木さんが出演する回を聴き、Kindleでダウンロードしてみた。雑誌の記事が元なのですぐに読めた。こないだ南千住で豪勢に鰻料理を堪能したばかりなので高級料理にしては身近に感じたのは事実。いつも思うのだけど、資本主義とかマーケティングは「庶民でもちょっと背伸びしたら貴族みたいな生活に手が届きます」という基本姿勢で世の中を豊かにしていくシステムなんだと思う。それはそれで良い面もあるのだけど、あまり野放しにすると例えば里山が枯れ木だらけになったり鰻が絶滅してしまったり原発が爆発してしまったりする。そのための法規制は必要だと思う。それはけっしてオカミが押しつけるものではなくて「マーケティングから目を覚ました庶民」たちが自ら国会で提案し、決議すべき性格の規制であるべきなのだと思う。
謎のアジア納豆: そして帰ってきた〈日本納豆〉
高野 秀行 / 新潮社 (2016-04-27)
読了日:2016年7月30日
とにかく高野秀行の本にハズレ無しってことで新刊もさっそく購入。毎朝納豆を食べている僕にとって知らない話ばかりのアジア納豆探索記はどまんなかのツボに的中し、キャンプ中ほかの作業をほったらかして暇さえあれば読んでいた。クールジャパンといえどもアジア各地に見られる手前納豆をこじらせたものだったのか。奇妙な風習や文化と思い込んでいたものが案外どこにでも見られるものだったという「新発見」はこれだけ海外旅行やネットが発達した21世紀においても探検すべきフロンティアが地球上にたくさん残されていることを示した。人間の好奇心がある限り世の中捨てたもんじゃない。とかいいながら読了後、Amazonで「納豆製造器」を検索しまくってしまった。
かもめのジョナサン【完成版】(新潮文庫)
リチャード・バック / 新潮社 (2015-07-01)
読了日:2016年7月27日
こないだ久々に飲んだ昔のバンド仲間と読書の話になり、彼は若い頃からこの本をバイブルみたいに持ち歩き読み返しているのだというのでその場でKindleダウンロードしてみた。キャンプ中、テントの中で読んだ。20世紀後半の世界でなぜかしら流行したこの物語はなんだか古臭いスピリチュアルもののように思えたのだけど、今世紀に入って著者が昔の原稿を追加したという第4章まで読み進めると必ずしもそうではないのだと思えてきた。オーウェルの動物農場、あるいはBeatlesのJohnが歌ったRevolutionの歌詞みたいなシニカルな話だったのかもしれない。友人がどの側面に感動したのかは聞いていない。だけど年を重ねるたび、読み返すたびに異なる手触りを残していくのが名作なのだろうからあえて聞くこともないのだと思う。
「日本スゴイ」のディストピア: 戦時下自画自賛の系譜
早川 タダノリ / 青弓社 (2016-06-30)
読了日:2016年7月19日
ここ最近毎日繰り返されるテレビ番組から本屋の店頭から電車の吊り広告、新聞の広告からSNSに流れてくる正体不明のヴァイラルメディアに至るまで「ニッポン最高」ノリのナルシシズム全開といった風潮には本当に心から嫌気が差している。今世紀に入った頃、ネットを中心に「中国や韓国の自国歴史ファンタジーと反日教育には呆れて物が言えない」なんて意見が流行していたけど、もはや日本は周辺国を遥かに凌駕するレベルで気持ちの良い物語だけを消費しているようにしかみえない。
ところがこの本に紹介される明治後期から大正昭和の書物からはそれらが今に始まったことではないことがよく理解できた。理解できたから嬉しいというわけではなくここのところずっと感じていた嫌気がより深刻になっただけである。願わくば僕の家族や友人くらいはそんなファンタジーに逃げ込まずに人生を送って欲しいと思う。
なぜ疑似科学が社会を動かすのか ヒトはあやしげな理論に騙されたがる PHP新書
石川 幹人 / PHP研究所 (2016-02-15)
読了日:2016年7月14日
僕の属する業界で、各企業の経営者の集まりに呼ばれた講師が動物占いといういかにもいかがわしい疑似科学商売の男だったという僕にとってはちょっとショックな出来事もあり、そういえば新聞を開けばサプリメントの広告ばかり、テレビをつければ芸能人が水素水の効能を語っている世の中になってました。SNSにはデマや流言が蔓延り良い年をした大人が真剣に陰謀論を語るのが21世紀だったなんて70年代のSF少年が見たらひっくり返るだろうななんて思いながら読みました。
SIMフリーがまるごとわかる本 (100%ムックシリーズ)
晋遊舎 (2016-04-15)
読了日:2016年7月13日
家族3人で2万円後半の通信費を毎月払っているのはどうなんだ?とふと疑問に感じて浜松町の本屋さんで買ってみた。あまり音声電話をしない僕らならどうやら1/3くらいにまで圧縮できそうだ。しばらく勉強してトライしてみようかなと。
日本会議の正体 (平凡社新書818)
青木 理 / 平凡社 (2016-07-08)
読了日:2016年7月13日
日本会議に関する新書はこれが2冊目だけどだからこそ重層的な理解が得られた気がする。100年前の国家宗教がまだ生き残っているとみるのか、戦後リベラル化した社会への反動とみるべきか。でも読んでいるうちに何だか地方都市のオヤジ達が集まっては薄っぺらな正義感を披露してそうだそうだと盛り上がるある種の反知性主義の快楽みたいなのがベースにあって、そこに大日本帝国への懐古と宗教心を色づけしていった息の長いムーブメントのような気がした。だからこそヤバいって気もするけど。この運動が本当に大きくなったらきっと日本のトランプみたいな人が出てくるのだろう。
帰ってきたヒトラー 下 (河出文庫)
ティムール・ヴェルメシュ / 河出書房新社 (2016-04-22)
読了日:2016年7月4日
映画を見たいと思ったのだけど熊本では見ることができないのです。映画館がまだ復旧してなくて。ふとKindleで探してみたらダウンロード可能だったのですぐに読み始めました。実に興味深い設定でときおり吹き出したりしながらあっという間に読んでしまいました。参議院選挙前に読むとリアル感が増してきて、どう考えても論理的でないのに大衆の感情を惹きつけてのし上がっていくタイプの候補者っているよなあとか。あとこのヒトラーみたいな人って現代日本にもたくさんいるよなあと。中小企業のオヤジで成功してるタイプは多かれ少なかれ彼みたいなキャラクターが多い、と思えてきたのです。経済と政治とは違うからいまのところ実害はないのでしょうが、強い信念を持って決断を下す有力者ってある種のヤバさを秘めている。
帰ってきたヒトラー 上 (河出文庫)
ティムール・ヴェルメシュ / 河出書房新社 (2016-04-22)
読了日:2016年7月3日
映画を見たいと思ったのだけど熊本では見ることができないのです。映画館がまだ復旧してなくて。ふとKindleで探してみたらダウンロード可能だったのですぐに読み始めました。実に興味深い設定でときおり吹き出したりしながらあっという間に読んでしまいました。参議院選挙前に読むとリアル感が増してきて、どう考えても論理的でないのに大衆の感情を惹きつけてのし上がっていくタイプの候補者っているよなあとか。あとこのヒトラーみたいな人って現代日本にもたくさんいるよなあと。中小企業のオヤジで成功してるタイプは多かれ少なかれ彼みたいなキャラクターが多い、と思えてきたのです。経済と政治とは違うからいまのところ実害はないのでしょうが、強い信念を持って決断を下す有力者ってある種のヤバさを秘めている。
危機の宰相 (文春文庫)
沢木 耕太郎 / 文藝春秋 (2008-11-07)
読了日:2016年7月3日
聴いてたラジオで経済評論家が薦めてたのを覚えていて、ふらっと寄った秋葉原の書店で購入。池田勇人の所得倍増計画を巡るブレーンを描くノンフィクション、僕の生まれた頃の時代だから当然記憶は無いけど昭和の政治の匂いだけは何となく覚えている気がする。名作だと思う。
人間にとって健康とは何か PHP新書
斎藤 環 / PHP研究所 (2016-05-13)
読了日:2016年7月3日
人間はもともと健康なものだが何かの原因で病気になるという「病因生成論」というこれまでの常識に反し「健康生成論」を唱えるというお話。そもそも健康とは、幸福とは、快楽とはといった言葉の定義にまで踏み込むあたりが面白かった。SOC、レジリエンス、GRRs、ホモクリットといった言葉を覚えておくと今後議論したり何かについて考えるときに便利そうだ。前半だけでも再読しておきたい。
日本会議の研究 (SPA!BOOKS新書)
菅野 完 / 扶桑社 (2016-04-28)
読了日:2016年6月26日
熊本はどういうわけか日本会議の人たちと出会う確率が高い。よく繁華街でチラシを巻いている。その主張を読むかぎり僕には荒唐無稽でアナクロ的でちょっとカルト気味だって気がしていたのでできるだけ避けていたけど、この本を読んでいてその感触の由来がわかった気がした。かつての学生運動を引きずっている人たちの影響がまだしっかり残っていたからかと。僕の通った大学は80年代にしては珍しく左翼団体が元気だった。たまに話を聞くとみなロボットのように誰かの言葉を繰り返しては他人の意見を封じることしかしてなかった。そう躾けられてたのだろう。自分の考えをもっていそうにない感じがして気味が悪かった。その後オウム事件が起きてますます「所属する団体の言い分を頭から信じて疑わない人」への気色悪さが増した。実際の本会議がどうなのか僕は知らないけどこの本に書かれている歴史が本当だとすればそんな昭和な雰囲気にはあまり近づきたくない。
ところでこの本の文体も昭和的だ。ちょっとB級ドキュメンタリールポっぽいのだ。それが演出なのかどうか分からない。
福島第一原発廃炉図鑑
開沼 博 , 竜田 一人 / 太田出版 (2016-06-07)
読了日:2016年6月26日
熊本に住んでいる僕にとって311とは前の前の大戦争、つまり第一次世界大戦みたいな感覚で捉え始めてる気がしている。でも本当はまだ終戦していなくて、それは原発の廃炉が完了した時点ではじめて講和条約が結ばれるからなのかもしれない。かつての戦争反対を唱えた人たちの中には「実は戦争は終わっていないしこれからも終わることはない」とか「戦争は非人道的ゆえにたとえ敗戦処理であってもけっして関わってはならない」「戦争を仕事にする軍隊に属する人間はみな穢れている」といった主張をする者が多くいたことを僕は知っている。いま原発問題においてもその歴史が繰り返されつつある気がする。この図鑑を読みながらむかし読んだ軍隊や武器を詳説した図鑑みたいだと思えてきた。できるだけ頭をニュートラルにして、正義感やべき論を頭から追い出して現実に直面するプロたちの話や最前線に生きる人たちの話を読むって感じだ。原発に賛成の人も、反対の人も、こういった現実を常にアップデートしながら論じないとどんどん空虚で観念的になってしまうのは昔の戦争を巡る議論と同じだと感じた。
ところで開沼氏の本は3冊目。今作でも彼は怒っている。文面はできるだけ穏やかにと努めているけど端々に苛立ちと怒りを感じる。でも双方の怒りが収まるときにもう一つの廃炉(社会的な)が終わるのかもしれないって気がした。
いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(3) (モーニングコミックス)
竜田一人 / 講談社 (2015-10-23)
読了日:2016年6月24日
2巻までは読んでたんだけど、廃炉図鑑みたら3巻も出ているらしいとのことで今回もKindleで読んだ。もし機会があればオンサイトを見てみたいと思う。良いとか悪いとか別にして、ものすごく興味あるのだ。熊本城をなんども見上げてしまうのと同じ感情なのかもしれない。
日の名残り (ハヤカワepi文庫)
カズオ イシグロ / 早川書房 (2001-05)
読了日:2016年6月8日
ブックオフで送料かせぎに買ってみたんだけどこれが抜群に面白く、北京からの帰りに一気に読んでしまった。1989年の作品だから村上春樹がブレイクした頃なはずだけど今まで手にしてこなかった。でもこれは良くできた作品だ。くすっと笑えるし。読みながら古いSF作品を思い出した。ロボットが主人公で、次第に人間的な感性を得ていくようなそんな作品だけど名前は思い出せない。映画アンドリューNDR114がいちばん近いかも。執事ってロボット的だからかな。いやもともとロボットという概念自体が執事をイメージして生み出されたものなのかもしれない。
人生エロエロ
みうらじゅん / 文藝春秋 (2014-04-22)
読了日:2016年5月30日
久々に日替わりセール。もう爆笑しながら1日で読んじゃった。すごい才能持ってる人なのになぜか僕にも書けるんじゃないかとか思わせてしまうところがあって、でも絶対無理なのだ。
グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー)
スコット フィッツジェラルド / 中央公論新社 (2006-11)
読了日:2016年5月30日
こないだ読んだヘミングウェイの「移動祝祭日」にフィッツジェラルドとの交流を(わりとひどく)描いた章があり、そういえば彼の作品はひとつも読んでないぞと中古本を入手した。独特のリズム感であっという間に引き込まれ最後まで一気に読んでしまった。村上春樹の翻訳のせいだろうかとても新しい作品のように感じた。
平成28年熊本地震  特別報道写真集  -発生から2週間の記録-
熊本日日新聞社 , 熊本日日新聞= / 熊本日日新聞社 (2016-05-23)
読了日:2016年5月29日
地元の新聞社が震災後2週間で発行した記録。妻が買ってきてたけどなんとなく見る気がしないまま過ごしてしまい、ようやく見る気になった。新聞は毎日読んでいたけどあらためて見直すと心がざわつく。
戦後政治を終わらせる―永続敗戦の、その先へ (NHK出版新書 485)
白井 聡 / NHK出版 (2016-04-11)
読了日:2016年5月18日
4月の震災後、初めての東京出張の機内で読んだ。前作「永続敗戦論」にはなるほどと思わせる記述が多かったけど本作はちょっと軽いというか、イデオロギー的な匂いを感じてしまって。
移動祝祭日 (新潮文庫)
アーネスト ヘミングウェイ / 新潮社 (2009-01-28)
読了日:2016年5月15日
熊本地震後の五月大型連休中、暇があるとずっと読んでいた。戦間期のヨーロッパで過ごした日々を思い出す著者が自死する少し前の遺作ということだけど、伝わってくるのは最初の妻と貧乏な暮らしを慈しむように思い出す疲れた男のノスタルジーだ。あの頃は辛いと思っていたけど、そんななんてことのない日常こそが自分にとっての宝だったのだ、と。身の丈に合った気持ちの良い日常から離れてしまった人間の発する何とも言えない香りが僕を魅了した。2015年11月に起きたパリ同時多発テロの後、この本が現地で再び読まれたことも知った。たぶんだけどそんな香りが人びとを本棚や本屋に駆り立てたのだろう。
東京防災
東京都総務局総合防災部防災管理課 / 東京都 (2016-03-30)
読了日:2016年5月14日
1ヶ月前の熊本地震前に読んでおけば良かったかなと思ったけど、我ながらそこそこ理にかなった準備をしていた気もしている。
愛国と信仰の構造  全体主義はよみがえるのか (集英社新書)
中島 岳志 , 島薗 進 / 集英社 (2016-02-17)
読了日:2016年5月14日
右から左までいろんな本に手を出してるけど、最近は著者の中島岳志氏のいう「リベラル保守」的な立ち位置がいちばん納得できる気がする。
1.戦前ナショナリズムはなぜ全体主義に向かったのか
2.親鸞主義の愛国と言論弾圧
3.なぜ日蓮主義者が世界統一を目指したのか
4.国家神道に呑み込まれた戦前の諸宗教
5.ユートピア主義がもたらす近代科学と社会の暴走
6.現代日本の政治空間と宗教ナショナリズム
7.愛国と信仰の暴走を回避するために
8.全体主義はよみがえるのか
ウイルスは生きている (講談社現代新書)
中屋敷均 / 講談社 (2016-03-20)
読了日:2016年5月10日
これも震災後しばらくして読んだほんのひとつ。個人と集団という境目についていろいろ考えた時期だったからウィルスについての下記のような表現がとても染みわたったのかもしれない。

「我々はすでにウイルスと一体化しており、ウイルスがいなければ、我々はヒトではない。」
「大腸菌をヒトの大きさと仮定すれば、我々ヒトは概ね日本列島の本州と同じくらいの大きさになる」
「ヒトは自己の維持に必要な代謝系の一部を外部環境に依存しており、決して自己完結していない」
「恐らく生命は様々なレベルで、様々な強さで生き物同士が、本来、繫がっているものなのだろう。少なくとも物質的には、誰も本当に「独立」などしておらず相互に依存し、進化の中では他の生物との合体や遺伝子の交換を繰り返すようなごった煮の中で、生命は育まれてきた。その生命の存在の様式は、あえて形容するなら、月並みではあるが「生命の輪」とでも言うしかないもののように思える。もし、その「生命の輪」が本当に一つの現象であるのなら、ウイルスは疑いもなく、その輪の無くてはならない重要な一員である。」
明治維新という過ち 【改訂増補版】: ~日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト~
原田伊織 / 毎日ワンズ (2015-11-29)
読了日:2016年5月8日
日替わりセールで購入。購入後すぐに熊本地震が発生してしまい読書どころではなくなってしまったけど、ひと段落して久々にKindleを手に持ちようやく読了した。つまり地震後初めて読んだ本となった。内容としては面白い視点だと思ったけど一方で長州藩出身者への差別としか表現しようのない言及にはちょっと限界を超えているのではとも思った。
日本人はどこから来たのか? (文春e-book)
海部陽介 / 文藝春秋 (2016-02-10)
読了日:2016年5月6日
ちょっと興味あるテーマだったので読んでみたけど学術ホント言うよりサスペンス的に楽しめる本だった。この本だけで疑問に答えが出たわけではないと思うんだけど。
ペット・サウンズ (新潮クレスト・ブックス)
ジム・フシーリ / 新潮社 (2008-02-29)
読了日:2016年4月10日
ブライアン・ウィルソン公演を前に再読した。映画「Love and Mercy」を見た後だっただけに最初読んだときよりもより具体的に伝わってきた気がする。せっかくのブライアン公演だけど、前日に熊本地震が起こってしまいけっきょく行けずじまいだった。
宇宙へ「出張」してきます ―古川聡のISS勤務167日―
古川 聡 , 林 公代 / 毎日新聞社 (2013-07-24)
読了日:2016年4月10日
Session22で著者の出演を聞いて。いたって気軽に読めました。
魔法の世紀
落合陽一 / PLANETS (2015-11-30)
読了日:2016年4月10日
20世紀は映像の世紀だったがこれからは「魔法の世紀」になるという。アーティストとしての活動についてはちょっと分からないところもあったけど、たしかにこれからは「現実」の定義までもが変容していくのだろうなあと少し納得したところもあり。
トルコ 中東情勢のカギをにぎる国
内藤 正典 / 集英社 (2016-02-05)
読了日:2016年4月10日
内藤先生の本は2冊目。Session22で聴いたので。ユーラシア大陸の両端でトルコとロシアは同じような歴史を歩んできたのかもしれない。そして今エルドアン大統領が進めるトルコの政策もまた日本の行く先を暗示しているのかもしれないと思った。
深夜特急1―香港・マカオ―(新潮文庫)
沢木耕太郎 / 新潮社 (1994-03-30)
読了日:2016年3月13日
5巻まで読んどいて1巻が手元にないことに気がつき、えいや、とKindleで揃えることにした。絶対に読んでるはずなんだけど、えっこんな描写だったっけ?と驚くことが多かった。たぶん僕自身が6年前に香港マカオを訪れたという経験がそうさせたのだろう。あるいはその後に見たテレビドラマと記憶が交錯していたのかもしれない。そしてギャンブルにハマる姿を読みながら、これは他人事では・・・と空を見上げるのであった。僕にはまったく判らない世界だけど。
深夜特急6―南ヨーロッパ・ロンドン―(新潮文庫)
沢木 耕太郎 / 新潮社 (1994-04-30)
読了日:2016年3月13日
というわけで1巻経由して最終刊の6巻へ。僕は25歳の頃にドイツからポルトガルまで一人旅をしたことがある。といっても全部で1ヶ月くらいの比較にならないほどのなんちゃって旅なんだけど、パリ、マドリッド、リスボン、とユーレイルパスだけ握って思いつくままに安宿を探して彷徨いた時の記憶が次々と蘇ってきてなんだか不思議な読書体験となった。あの頃はもう既に同じ業界で働いていたわけで、つい昨日のように思い出せる仕事の付き合いもあれば、前世の記憶ではないかと疑わしき異国の匂いまで立ち上がってくる。あの頃はほとんど写真なんて撮らなかったしこうしてブログを書く習慣も無かった。だから純粋に映像と音と嗅覚だけの記憶しかないわけど、そんな情報が自分の脳内に残ってることの方が不思議だった。そしてまた老いてこの本を手に取るとまた違った記憶が立ち上がってくるのだろう。旅をしたり本を読んだりするのはそうやって古い記憶をどこかに溜め込んでおくことで未来の自分を驚かせる仕込みみたいなものなのかもしれないなあ、なんて思ったり。
深夜特急5―トルコ・ギリシャ・地中海―(新潮文庫)
沢木 耕太郎 / 新潮社 (1994-04-30)
読了日:2016年3月13日
どこかで読んだ気がしたのは村上春樹の「遠い太鼓」を思い出したからなのだろう。美しく古代国家の趣を残すこれらの土地も今や戦乱の中心みたいになってるわけで、いま僕が20代でもやっぱり同じルートのバス旅はできないのかもしれない。そう思うとこの本にはまだまだ多くの価値がある。どんな戦場だって少し前までは平和な土地だったことが判るし、ということはまたいつか、という気がしてくるからだ。
深夜特急4―シルクロード―(新潮文庫)
沢木 耕太郎 / 新潮社 (1994-03-31)
読了日:2016年3月13日
先週ふとしたことで手に取った深夜特急、あっという間に4巻目もダウンロードしてしまい夜中に読んでしまう。だから深夜特急なのか。パキスタンやアフガニスタンには当然行ったことがないので懐かしい気がする方がおかしいのだけど、でも今世紀に入ってから幾度となく耳にしてしまう都市や地帯の名称を読みながら、こんなに平和だったのになんてことになってんだろう、とつい考えてしまう。でももしかしたら現地は今でも力強く親切でそして旅人に対して笑みを掲げているのかもしれない。そんなことは行ってみないとわからない。
世界はこのままイスラーム化するのか (幻冬舎新書)
中田考 , 島田裕巳 / 幻冬舎 (2015-10-15)
読了日:2016年3月7日
アマゾンに薦められて買ってみた。イスラム教については何度トライしても体系的に把握することができないのだけどこの対談を読むと今までてんでバラバラに散らかっていた言葉が繋がっていく気がした。一番印象的だったのはイスラム教徒は「世の中がだんだん良くなっていくとは考えていない」という指摘だった。21世紀的ではないかもしれないけどだからといって簡単に否定できない魅力を放つ言葉だ。
深夜特急3―インド・ネパール―(新潮文庫)
沢木 耕太郎 / 新潮社 (1994-03-31)
読了日:2016年3月5日
ついにインドにまで。僕はこれまで1987年と2009年の2回インドを旅したことがある。最初の旅はたしかに沢木耕太郎が活写したような感じだった。でも2009年にもなると誰もが携帯電話を持ち歩いてたりしててだいぶ様変わりしてた。それでもインドは強烈にインドだったけど。ネパールにも機会があれば行ってみたい。
深夜特急2―マレー半島・シンガポール―(新潮文庫)
沢木 耕太郎 / 新潮社 (1994-02-28)
読了日:2016年3月5日
妻が全巻文庫本を持っていたので確かに読んだことがあるはずなのだけど完全に忘れてて、ふとしたことでダウンロードした2巻から再読を始め、眠れぬ夜だったこともあり2時間ほどで一気読みした。70年代のアジアを歩いているような気分に浸れた。
苦海浄土 わが水俣病 (講談社文庫)
石牟礼道子 / 講談社 (1972-12-15)
読了日:2016年3月5日
妻が読みたいからとKindleで買っていたのを僕もちょっと読んでみようかなと手に取った途端に引き込まれ、気がついたらほぼ1日で読んでしまっていた。水俣病については知っているようで知らないことも多くあり、僕が生まれる少し前の書かれたこの本からは時代を超えた迫力を感じた。といっても文章が素晴らしく、ありがちな告発系の気負いなど微塵も感じられなかった。同じ八代海で育った僕としてはけっして他人事ではないし21世紀になっても問題の構造は継続したままだと感じることも多かった。
その後のツレがうつになりまして。 (幻冬舎文庫)
細川貂々 / 幻冬舎 (2015-07-03)
読了日:2016年3月4日
以前読んだ本の続編マンガ。あっという間に読んでしまった。
戦争の条件 (集英社新書)
藤原帰一 / 集英社 (2013-04-22)
読了日:2016年2月25日
戦争について考えることはほとんど人間の業について考えることと変わらないと思った。この本に正解は書かれていない。いくつもの設問が少しずつ形を変えながら提示され、ありがちな答えから想像もしなかった考え方までが羅列されて終わる。それでもひとつだけ大きな正解を読者は得ることができる。それは「国際関係にはすっきりした正解などない」という答えだ。それは人間の業だからだろう。常に争うという性質のおかげで人類は進化し繁栄してきた以上、未来永劫に争いから解放されることを期待することないのだろう。それでもあらゆる手を使って不幸な殺戮をひとつでも減らすための努力もまた人類の希望なのかもしれない。
1998年の宇多田ヒカル (新潮新書)
宇野維正 / 新潮社 (2016-01-15)
読了日:2016年2月20日
届いてすぐに一気読み。1998年に揃って誕生した宇多田ヒカル、椎名林檎、aiko、浜崎あゆみらが時代とそれぞれに関係した物語を西寺郷太的に振りかえる。昭和40年生まれの僕は戦後20年後にこの世に誕生したことになる。2016年の現在に1998年を振りかえるってのはそんな時間感覚なのかと考えるとなんだか不思議な気分になる。
世にも奇妙なマラソン大会 (集英社文庫)
高野秀行 / 集英社 (2014-04-23)
読了日:2016年2月19日
狙い澄ましたようにKindle日替わりセールのメールが届き即ダウンロード、福岡へ向かうバスの中で読んだ。マラソン初挑戦の著者がよりによって西サハラの砂漠を走るという無鉄砲な3週間の記録。ちょうど高知龍馬マラソンと熊本城マラソンに挟まれた日に読んだのも何かのご縁かなと感じつつそれでも僕が挑戦することは一生ないと思う。他の短編もどこか心に残る面白い物語だった。
この経済政策が民主主義を救う: 安倍政権に勝てる対案
松尾 匡 / 大月書店 (2016-01-20)
読了日:2016年2月18日
ラジオなどで話題になっていたので。左右両陣営の評論家が薦めていたので読んでみようと取り寄せたのですが、これまでに気がつかなかった視点がたくさん盛り込まれており大変ためになった。冒頭から展開される安倍政権の真の狙い、というのはどこまで本気なのか経済問題に目を向けて貰うためのネタなのかわからないけど。
「経済成長」についてはこれまで僕も考えることが多かったのだけど、「短期」と「長期」ではまるで異なる考え方が必要なこと、「天井」を捉えることでその違いを意識しながら施策が行えることなど、長年経済を勉強してきたつもりだったけどまるでわかっていないことが明らかになった。
著者は偶然だけど僕と同い年でしかも出身大学経済学部の教授なのであった(学生時代に接点は無いけど)。
ツレがうつになりまして。 (幻冬舎文庫)
細川貂々 / 幻冬舎 (2015-07-03)
読了日:2016年2月13日
Kindleの日替わりセールで。読み始めるまでマンガとは知らなかったくらい白紙の状態で読んだけど最後まで一気に読んでしまい、続編も買ってしまった。僕はいつもやる気が無いけど食欲と睡眠欲だけは途絶えたことがないので今のところ大丈夫なのかなと思った。
すべての戦争は自衛意識から始まる---「自分の国は血を流してでも守れ」と叫ぶ人に訊きたい
森 達也 / ダイヤモンド社 (2015-01-30)
読了日:2016年2月5日
著者の映画も本も読んだことないのだけど先日読んだ本の参考文献だったので取り寄せてみた。もっと過激なことを書く人かと思っていたけどまったく予想外でとてもニュートラルな意見だと思った。込み入った事象でもどうにかしてうまいたとえ話をみつけて納得しようと試みる態度は僕と同じだと思った。できるだけ外的な情報を断ち自分の心に素直な評価を貫き通そうとすればこうなるのだと思う。
幻獣ムベンベを追え (集英社文庫)
高野秀行 / 集英社 (2003-01-22)
読了日:2016年2月4日
indleお勧めセールで。高野本はひたすら追いかけてますがこれが処女作ということで一気読み。1987年のアフリカ冒険旅行を当時大学生の著者らが記す。驚くべきは今と筆致がちっとも変わっていないことだ。80年代の大学生が書く文章といえば当然のように軽はずみでノリ一発のちゃらいはずがまったくもって落ち着いていた。やはり才能なのだろう。同じ時期に僕はインドに旅してたはずだけど当時の大学ノートは恥ずかしくてみられたもんじゃない。
車輪の下(下)
ヘルマン・ヘッセ / 古典教養文庫 (2014-08-25)
読了日:2016年1月28日
ヘルマン・ヘッセ〜中学生の頃の必読書だった気がするけどだからこそ未読のまま人生を終えるはずだったが、TBSラジオの企画を通して読んでみようかなとKindleで一気読了。100年前の少年たちの姿を通してパブリックとプライベートとの関係や個の確立に関する当時の大激変を体感することができた。現代における自分探しとは真逆の問題かもしれないけど誰もが認める答えが出ていないという点では同じ根源だと思った。
移民の宴 日本に移り住んだ外国人の不思議な食生活 (講談社文庫)
高野秀行 / 講談社 (2015-09-15)
読了日:2016年1月28日
高野さんの本はあまりに面白いのでコンプリート目指して見つけたら入手するようにしてるんだけどこれはKindle日替わりセールで。震災直後の2011年、日本に住む外国人たちのコミュニティを尋ねる連載。やたらと外国人を批難したり軽蔑したりする発言に溢れている2016年に4年前のレポートを読むとなんだか不思議な居心地の良さが漂ってくる。最後に著者が書いている下記文章はまったくその通りだと思う。
“これから日本が外国の人たちにとって、もっともっと住みやすい国になることを祈って止まない。なぜなら、そういう国は明るく気さくであるはずで、日本人にとっても住みやすいはずだからだ。”
車輪の下(上)
ヘルマン ヘッセ / 古典教養文庫 (2014-06-15)
読了日:2016年1月27日
ヘルマン・ヘッセ〜中学生の頃の必読書だった気がするけどだからこそ未読のまま人生を終えるはずだったが、TBSラジオの企画を通して読んでみようかなとKindleで一気読了。100年前の少年たちの姿を通してパブリックとプライベートとの関係や個の確立に関する当時の大激変を体感することができた。現代における自分探しとは真逆の問題かもしれないけど誰もが認める答えが出ていないという点では同じ根源だと思った。
メイカーズ進化論 本当の勝者はIoTで決まる (NHK出版新書)
小笠原 治 / NHK出版 (2015-10-10)
読了日:2016年1月22日
Kindleの日替わりセールで購入。IoTという言葉はよく耳にするけどそのコンセプトや将来像について頭の中をまとめるのに役だった。著者の言う「モノ」が「モノゴト化」していく、というキーワードは僕らの業界についても言えると思う。器械や材料という手段だけを販売していた過去からそれらが目的とする医療をもサービスの範疇にいれていくことと似ていると感じたからだ。最近覚えた用語に言い換えればサービサイズ、だ。そのためのヒントは横井軍平さんのいう「枯れた技術の水平思考だというという共通点もあるはずだ。
戦争を記憶する 広島・ホロコーストと現在 (講談社現代新書)
藤原 帰一 / 講談社 (2001-02-20)
読了日:2016年1月16日
2001年に書かれた本だから911以前の論考なのだが2016年でも立派に通用するのだから著者が凄いのか世の中が変わっていないのか。戦争に対する態度がアメリカや日本、戦前と戦後でどう違うのか、その類型について明確に書かれており頭の整理に役立った。平易な文章なのに二度三度読み直さないと次へ進めない濃密さを古本屋で108円で入手できたのだからとてもありがたい。
「リベラル保守」宣言
中島 岳志 / 新潮社 (2013-06-28)
読了日:2016年1月9日
ご本人のツイートで知りダウンロードしkindleで一気読み。右翼vs左翼とか保守vs革新とか現実主義vs理想主義だとか思想信条についてはいろんな分け方があると思うけど、著者の掲げる「リベラル保守」というカテゴライズには納得感があった。だけど僕は自分自身を○○派とか××陣営といったジャンルに押し込むことはできるだけ避けたいと思っている。そういうのに縛られるのは息苦しいものだし、SNSなんかでも党派性ばかりを感じさせる発言を見るとどこか残念な気分にしかなれないからだ。その辺はロック音楽のジャンル分け問題と似ているかな。とても良い論考だ。
メディアのからくり―公平中立を謳う報道のウソを暴く (ベスト新書)
保岡 裕之 / ベストセラーズ (2002-06)
読了日:2016年1月8日
以前読んだ本の参考図書に掲げてあったのでブックオフで取り寄せ(108円)。2002年に刊行された新書だけど今だからこそ面白いところが沢山あった。911アタックの直後に書かれただけありメディア報道に対する危機感に溢れている。でもそれは今とたいして変わらない。最後にネットメディアへの希望が語られるが、残念なことに15年後にそのネットメディアこそがもっとも腐臭を放っているわけで、なかなか先を見通すことは難しい。
日本歯科企業協議会 (1977-03)
読了日:2016年1月3日
実際は1986年発刊の流通編を読んだ。本棚の整理をしてたら見つけたのでお正月明けに読んでみた。1986年にいま僕が所属している日本歯科企業協議会から発刊されている(なんで僕んちにあるんだろう?)本だけど、古くは江戸末期からバブル直前までの歯科器材業界の歴史が整理されていて興味深く読めた。知らないことも沢山あったし、誤解していたことも多かった。折しも明治期の手記やNHK映像の世紀などをみていた時期でもあり、何もかも繋がった気がしたのもよかった。

【流通業界編(含輸入業界)】
1.歯科用品商の誕生ーーー並に問屋の勃興(明治時代)
2.業界の基礎固まるーーー小売店の台頭(大正時代)
3.変貌する販売業界ーーー新旧勢力の対立(昭和2年〜15年)
4.太平洋戦争下の販売業界ーー抹殺される商店(昭和16年〜20年)
5.新旧交代のうねりの中でーー混乱から復興へ(昭和20年〜29年)
6.高度成長の光と影ーーー際立つ二重構造(昭和30年〜39年)
7.厳しさの中の成長ーーー団体の役割増大(昭和40年〜49年)
8.新しい進路を目指してーー問われる企業の質(昭和50年〜

【歯科材料業界編】
1.明治の歯科材料
2.歯科材料業界の基礎を築くーーー大正時代
3.昭和初期の業界ーーー勃興、そして衰退
4.ゼロからのスタートーー昭和20年代
5.競争と拡大に向かっての幕開けーーー昭和30年代
6.高度成長から不安、混沌の時代へーーー昭和40年代

【歯科用薬品業界編】
1.欧米歯科用薬品の輸入と販売
2.歯科用泊品メーカーの誕生とその後の推移
3.薬事法の改正と戦後の歯科用薬品業界
4.体質改善への動き
5.歯科用薬品製造業の実態
誰のために―石光真清の手記 4 (中公文庫 (い16-4))
石光 真清 / 中央公論新社 (1979-12-10)
読了日:2016年1月3日
お正月をまたいで読んだ最終作。真清氏もすっかり年をとってしまい(といってもまだ50代だけど)やることなすことうまくいかない。それでも気持ちばかりが先行して無茶な努力を続けるのだが、どうしても結果が出せないことが多く、嘆くばかりとなった。若いときの威勢の良さはなくなってしまったけど、それでもどこか憎めないのは少年時代から何も変わらないまっすぐな性格の持ち主だからだろう。
もちろん手記だからすべてが歴史的事実というわけでもないだろうし、職業柄か家庭人からかわからないけど敢えて書かなかったことも多いはずだ。それでもこの4作品を書いた真清氏の目を通して僕の頭の中には明治から昭和の時代観みたいなものがするりと入ってきた。ただ単に事実ばかりを追いかけるよりこうやって一人の人間の目を通して時代を眺めることは歴史の横軸になるのだと思った。年末忘年会で著名人に勧められるというきっかけから彼を知ったのだけどこれも何かの縁だと思う。熊本市内に彼の生家が保存されているそうだから今度行ってみようと思う。

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